研究課題/領域番号 |
23K06891
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
涌井 昌俊 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (90240465)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 凝固波形解析 / 凝固異常 / 凝固検査 / 機械学習 / デジタルトランスフォーメーション |
研究実績の概要 |
2023年度は、市販正常血漿、市販凝固因子欠乏血漿、市販ループスアンチコアグラント陽性血漿、経口抗凝固薬の添加血漿を対象に凝固波形解析(CWA)を実施して種々のパラメータデータを取得した。これらのCWAで獲得した凝固反応曲線とその逐次微分による凝固波形を投入して、ランダムフォレスト法を用いて機械学習を実施し、各種凝固異常の予測を試行した。その結果、凝固反応曲線と一次微分凝固波形の組み合わせによる学習が最も正答率の高い予測をもたらすことが示唆された。 倫理委員会への申請承認を経て、本学病院の外来・入院患者の凝固検査結果とCWAデータを集めて、各種CWAパラメータの意義に関する再考と検証を開始した。具体的には、APTTおよびPTが正常である検体を対象に、凝固反応曲線の高さに相当する透過光強度変化に基づく補正前と補正後のパラメータ間の相関、フィブリノゲン濃度と補正前CWAパラメータの相関、フィブリノゲン濃度と補正後CWAパラメータの相関、凝固時間の秒数(APTT、PT)と補正前CWAパラメータの相関、凝固時間の秒数と補正後CWAパラメータの相関を検討した。これらのうち、フィブリノゲン濃度と補正前CWAパラメータの相関、凝固時間の秒数(APTT、PT)と補正後CWAパラメータの相関は良好であった。APTTまたはPTの延長を呈する患者検体についても検討し、概ね同様の観察が得られたが、フィブリノゲン濃度と補正前CWAパラメータの相関から外れる検体が正常検体の群よりも多く認められ、凝固反応曲線位おける透過光強度変化はフィブリノゲン濃度だけではなく、形成されるフィブリンクロットの性状にも依存することが示唆された。凝固時間、補正前後のCWAパラメータ、フィブリノゲン濃度を駆使することで凝固異常スクリーニングのデジタルトランスフォーメーションの可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通りに添加実験系でのCWAデータの取得と、それを用いる機械学習を開始できた、また、診療検体のCWAデータの収集も順調に遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
市販正常血漿、市販凝固因子欠乏血漿、市販ループスアンチコアグラント陽性血漿、経口抗凝固薬の添加血漿を対象としたCWAにおける凝固反応曲線とその逐次微分による凝固波形を用いるランダムフォレスト法がもたらす正答に寄与する特徴量の抽出を進める。ランダムフォレスト法以外の方法による機械学習も実施し、異なる方法論の間での予測の優劣を比較検討する。いずれの方法論の場合も、正答に寄与する特徴量を抽出し、凝固反応事象との関連づけを行う。凝固反応曲線とその逐次微分による凝固波形を直接投入する学習だけではなく、各種CWAパラメータのデータを投入する機械学習も行い、前者による予測能と比較する。 診療検査データを対象に、凝固時間検査データ(APTT、PT)、フィブリノゲン濃度、CWAの補正前後のパラメータデータを用いて、複数の方法で機械学習を実施し、凝固異常の予測能を評価する。また、既成概念となっているそれらの特徴量ではなく、凝固反応曲線そのものを用いて時系列クラスタリングに立脚した機械学習も実施して新たな特徴量の抽出を図る。既成概念となっている特徴量と学習を通じて得られる特長量の間で、凝固異常の予測能を比較する。 上述の検討を通じて、凝固異常スクリーニングのデジタルトランスフォーメーションの実現に向けて、データおよび学習法の選択・最適化を確立することをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の想定よりも安く購入できた試薬があったため、その分に相当する275,284円を次年度の物品費、旅費、その他のいずれかに使用する。
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