研究課題/領域番号 |
23K07323
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
渡邉 昂 川崎医科大学, 医学部, 助教 (60817071)
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研究分担者 |
松田 純子 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60363149)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Krabbe病 / ガラクトシルセラミド / ラクトシルセラミド |
研究実績の概要 |
我々は、Krabbe病モデルマウス(Twitcherマウス、Twi)と酸性セラミダーゼの活性化タンパク質であるサポシンDの欠損マウスを交配してサイコシンを蓄積しないKrabbe病モデルマウス(Twi/SapD KO)を作製した。Twi/SapD KOマウスは、サイコシンが蓄積しないにもかかわらず脱髄を呈し早死にであったことから、Krabbe病の原因はサイコシンの蓄積だけでないことを明らかにしている。これらのマウスの脳では、ガラクトシルセラミド (GalCer)が減少し、ラクトシルセラミド (LacCer)が蓄積していた。LacCerは、TwiマウスよりもTwi/SapD KOマウスの方が多く蓄積していた。そこで、TwiマウスとTwi/SapD KOマウスの脳からアストログリア、オリゴデンドログリア、ミクログリアといったグリア系細胞とニューロンを単離しLC-MSで解析した。TwiマウスとTwi/SapD KOマウスでは、オリゴデンドログリアにはGalCerが蓄積していた。TwiマウスとTwi/SapD KOマウスでは脱髄によって、神経細胞が減少するため、脳全体のGalCerは減少するが、オリゴデンドログリアの細胞内には分解できないGalCerが蓄積していると考えられる。LacCerは、アストログリアとミクログリア、ニューロンに蓄積していた。特に、早死にになるTwi/SapD KOマウスのニューロンでは、LacCerがTwiマウスよりも多く蓄積していた。また、Twi/Sap-D KOマウスではTwiよりも軸索腫大が多く見られた。したがって、LacCerの蓄積と神経病態には関連があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Krabbe病の病態を明らかにするために、細胞の分画や脂質解析法を明らかにし細胞種別ごとの脂質解析法を確立した。また、現在、発現解析や免疫活性化のメカニズム解析なども進んでおり、概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ニューロンに蓄積していたLacCerはLC-MSによるセラミド骨格組成解析から、ニューロンに豊富に存在するガングリオシドが、分解されることで産生され、蓄積したと考えられる。今後は、ガングリオシドの分解に関わる酵素のノックアウトマウスを用いて、LacCerの蓄積量と神経細胞死の関係を細胞種別ごとに分離して明らかにする。LacCerは、様々な神経ストレスによって産生されることも知られているため、薬剤を用いたKrabbe病とは異なるメカニズムによる脱髄を引き起こし、同様に細胞種別ごとに分離し解析する予定である。また、これまでGalCerがマクロファージを活性化することを明らかにしており、GalCerの認識に関与するタンパク質の同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は物品費が安価に抑えられたため、約1.5万円の端数が発生した。翌年に繰り越して消耗品を購入したほうが有効的に使えると判断して次年度に繰り越した。
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