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2023 年度 実施状況報告書

自然免疫の活性化により小細胞肺癌の抗癌剤耐性克服を目指す新たな治療戦略の確立

研究課題

研究課題/領域番号 23K07639
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

南 俊行  兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (00705113)

研究分担者 木島 貴志  兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90372614)
北島 一宏  兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (80448860)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード小細胞肺癌 / 自然免疫 / I型インターフェロン
研究実績の概要

小細胞肺癌(Small Cell Lung: SCLC)は、その高増殖性・高転移性・易抗癌剤耐性獲得
性のため肺癌の4つの組織型の中で最も予後不良である。肺癌治療は①ドライバー遺伝子変異・転座陽性例に対する小分子阻害薬、②血管新生阻害薬、③免疫チェックポイント阻害薬(Immune checkpoint inhibitor: ICI)の3つに大別される分子標的治療薬の相次ぐ登場により格段に進歩し、「内科的治療では肺癌の根治は不可能」という概念が覆されつつあり、SCLCにおいてもICIと細胞障害性抗癌剤の併用療法が、約20年ぶりに新たな標準治療として登場し、実臨床で使用されている。しかしながら現実的には非小細胞肺癌(non-SCLC:NSCLC)で見られるような生存期間の持続的延長効果をICIがもたらす事は少なく、特に2次治療以降でその有用性を示すデータは皆無である。
本研究の目的は、特に自然免疫系を活性化する事が、SCLCの抗癌剤耐性の克服と長期間の病勢制御に繋がるかを検証する事である。申請者らは自然免疫と獲得免疫の両者を結ぶ鍵分子と言われているI型interferon(Type I IFN)に注目していて、Type I IFNの発現調整に関わる分子を標的とした治療が、SCLCに対する新たな癌免疫療法となり得るかを検証している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の初年度として、SCLC細胞とその抗癌剤耐性株を使用したin vitroの解析を行なった。
申請者らは過去にSCLC細胞はMHC classⅠ分子の発現が弱く、それが獲得免疫が働きにくい理由かと考えていたが、今回、SCLC細胞と抗癌剤耐性株の各免疫チェックポイント分子(Immune checkpoint molecule:ICM)の発現を調べた所、抑制性ICMであるGalectin-9の発現が抗癌剤耐性株で大きく低下している事が分かった。Galectin-9低発現細胞はnatural killer細胞といった自然免疫細胞に感受性が高い事が知られており、やはり自然免疫系の活性化はSCLCにおいて抗癌剤耐性の克服に有用であると思われた。さらに自然免疫活性化の鍵分子としてのType I IFNの発現は、Z-DNA binding protein(ZBP)-1の発現とlinkしている事も分かった。
現在ZBP-1の強制発現SCLC細胞とKO SCLC細胞の樹立を試みている。

今後の研究の推進方策

2年目はin vitroの解析をさらに進めると同時に、in vivoの解析も行う予定である。
課題としては、ヒトType I IFNはマウスの細胞に働かないという点である。マウスのSCLCについては肺胞上皮細胞のRbとp53をKnockoutする事によって自然発生するモデルが知られているが、樹立には時間・費用の面で難しいと想定される。そのため、現時点ではZBP-1強制発現ヒトSCLC細胞をヒト化マウスに移植する予定である。hIL-15-NOGマウスへヒト末梢血から単離したNK細胞を移植する事で、ヒトSCLC細胞由来のType I IFNに反応するNK細胞の反応をin vivoで確認する事が可能である。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
今年度はin vitroの実験が主で、細胞や試薬については既に研究室に備蓄されていたものを有効に使用する事ができたため、若干ではあるが、差額が生じる結果となった。
(使用計画)
次年度は、動物実験やヒト臨床検体の免疫染色での解析を行うことを想定していて、動物の購入・飼育費、検体の解析費用が大きく増加すると思われ、差額分を含めた研究費を使用させて頂く予定である。

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公開日: 2024-12-25  

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