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2023 年度 実施状況報告書

情動に関与する神経回路の持続的な活性化に着目した慢性疼痛の発症機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K08365
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

加藤 利奈  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (20448715)

研究分担者 志田 恭子  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (00381880)
大澤 匡弘  帝京大学, 薬学部, 教授 (80369173)
祖父江 和哉  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90264738)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード慢性疼痛 / 情動
研究実績の概要

本研究の最終目的は、疼痛の慢性化に情動を調節する神経回路の持続的な活性化が必要であるという仮説の検証である。情動を調節する神経回路の持続的な活性化を達成する必要があるため、内因性物質では活性化されず、人工的な化合物のみで反応する変異型受容体(DREADD)を特定の細胞へ発現させ、その機能を調節する化学遺伝学的手法を用いて検討を行った。
まず、情動に関係する神経回路のうち、痛みに関連が深い前帯状回へ投射する内側視床を起点とする神経細胞のみに興奮性のDREADDを発現させる手法を、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)とCre-LoxPシステムを組み合わせた手法により達成した。この内側視床から前帯状回皮質へ投射する神経回路を選択的に活性化すると、一過性の痛み閾値の低下がvon Frey 試験で観察された。
さらに、DREADDを発現したマウスに選択的リガンドを持続的に飲水させ、内側視床から前帯状回皮質へ投射する神経回路を持続的に活性化すると、痛み閾値の持続的な低下が認められ、本神経回路の慢性的な活性化が疼痛の慢性化に関わることを示唆できた。また、前帯状回皮質へGCaMP7を神経細胞特異的に発現させるため、AAVを用いた遺伝子導入法を完成させた。
現在、GCaMP7を神経細胞へ特異的に発現させたマウスの前帯状回皮質へGRINレンズを埋植し、ミニスコープを介して神経活動の計測を行う準備をしている。また、複数脳領域の周期的な電気活動を計測するため、タングステン電極を前帯状回皮質と内側視床へ埋植する技術を開発しており、多点電極を用いた周期的脳活動の記録や解析により、疼痛の慢性化に伴い変化が見られる脳活動の抽出が可能となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の達成目標として、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いた遺伝子導入法の確立(化学遺伝学ならびにイメージング)と行動学的解析の一部を進めることとしていた。内側視床から前帯状回皮質へ投射する神経回路特異的に変異型受容体(DREADD)を発現させることに成功し、さらに、神経活動の計測を行う前帯状回皮質の神経細胞へカルシウム指示タンパク質であるGCaMP7を発現させることに成功した。これにより、AAVによる脳領域特異的かつ細胞種特異的な遺伝子発現を可能とすることができた。さらに、小型の動物であるマウスを用いて、複数の脳領域から周期的脳活動を計測するための電極埋植を行うことができ、マウスからも多数の脳領域から周期的脳活動の計測を自由行動下でも実施できる環境を整えた。また、AAVにより内側視床から前帯状回皮質へ投射する神経回路へ細胞を興奮させるDREADDを発現させ、その特異的リガンドを用いて、神経回路特異的活性化を実施した状態での行動解析も行うことができたため、本年度の目標はほぼ達成できたものと考えている。

今後の研究の推進方策

今後の研究としては、内側視床から前帯状回皮質へ投射する神経回路の慢性疼痛への寄与について行動学的手法を用いて、詳細に検討を行う。また、前帯状回皮質における神経活動の変化を通常状態の動物と慢性疼痛の状態の動物で記録する。さらに、化学遺伝学的手法により慢性疼痛となった動物の神経活動についても同様に検討を行う。最後に、多点の電極を用いた周期的脳活動の計測により、慢性疼痛モデルの動物における周期的脳活動を記録し、疼痛が慢性化している状態、もしくは疼痛が長期に残存している状態での脳活動の経時的変化について解析を行い、慢性疼痛に特異的な脳活動の抽出を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

引き続き、GRINレンズを用いてカルシウムイメージングを行うため、レンズの費用が必要である。また、複数脳領域の周期的な電気活動の計測のため、タングステンなどの電極を作成する材料の費用が要り、次年度使用額が生じた。

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公開日: 2024-12-25  

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