HOXC8を過剰発現させた子宮内膜間質細胞(HOXC8-Etst)をコラーゲンゲルに包埋した細胞凝集塊を作成し、卵巣・卵管を除去した重度免疫不全マウス(NOD/SCID)の左右腎被膜下に移植した。過剰発現させない細胞(GFP-Etst)をコントロールとした。子宮内膜症の発症環境を再現するため、ホルモン投与として、月経周期を模したcyclic-Estrogen/Progesterone投与法を用いた。HOXC8-EtstとGFP-Etstを比較したところ、HOXC8-Etst群では、移植細胞が腎実質に浸潤し、増殖している様子が観察され、GFP-Etst群では細胞の腎実質への浸潤は認めなかった。更に、HOXC8-Etst群の浸潤細胞の周囲についてトリクローム染色で観察したところ、コラーゲン産生が増大している様子が確認された。 筆者らはこれまでの研究で、HOXC8が子宮内膜症の主たる病変である卵巣チョコレート嚢胞において発現が亢進していること、また、HOXC8の過剰発現により子宮内膜間質細胞でTGF-betaシグナル経路が活性化し、細胞増殖能、浸潤能、線維化能が更新することを実証してきた。本課題研究の結果は、HOXC8の過剰発現によりTGF-betaシグナル経路が活性化され、細胞増殖・浸潤・線維化能が亢進することにより、実際に細胞が臓器浸潤と線維化を引き起こすことがわかった。即ち、子宮内膜症の発症・進展に、HOXC8の発現異常が関与していることが明らかとなった。
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