研究課題/領域番号 |
23K10853
|
研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
膳法 亜沙子 流通経済大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (50734141)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 心血管疾患 / 動脈硬化度 / 増量 / 食事改善 / 肥満 / 痩せ |
研究実績の概要 |
申請者は、これまでに肥満者における減量が動脈硬化度にポジティブな効果をもたらすことを報告している一方、過度な減量をせずに肥満者の動脈硬化度が有意に低下する現象を捉え、報告してきた。これまでの私の研究を含めて世界中の多くの研究が肥満対策に取り組む一方、やせ対策も我が国において重要な社会的課題である。特に女性における過度な痩身願望により健康を害することのみならず、加齢にともなうサルコペニアやフレイルの問題からも痩せは健康を害するため望ましくない。しかし、現状としてむやみに「増量」することは生活習慣病リスクを高めることから具体的に健康のための増量法は確立されていない。 そこで特に本研究は、心血管疾患(CVD)リスクを伴わずに増量することが可能であることを示し、具体的な増量法として望ましい食習慣の特性を明らかにすることを目指す研究である。栄養学的な横断調査や介入研究による実践を踏まえてCVDリスクを伴わない増量をもたらす食事改善法を明らかにしようと研究計画を立てた。 今年度は、この計画のうち介入研究を実施し、本研究の目的とする「CVDリスクを伴わずに増量する方法の実現可能性」を示す第一歩となる成果を得ることができた。 さらに、増量法として望ましい食習慣の特性を明らかにするためのデータもまとめて国内学会にて発表する準備を実施した(令和6年度5月に発表予定)。 計画段階では、初年度は研究を実行するのみの予定であったが、データ公表の準備を行うまでに至ったという点で令和5年度の研究実績は予定以上の成果を上げることができたと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、様々な対象者の食習慣を調査し、CVDリスクが上昇しない者の特徴と増量+微量栄養素充足が動脈硬化度および血管内皮機能に与える影響について2つの課題(横断調査と介入研究)から目的を達成することを計画した。 令和5年度に介入研究として、課題2に計画した「非肥満者における増量介入時の微量栄養素充足が血管機能低下を抑制するか?」の検討を実行することができた。データ分析中であるが、喫煙習慣・CVD既往歴のない健康な成人(18歳以上)の増量を望む対象者(BMI<27kg/m2)15名を対象として増量を目的とした食事改善指導を実施し、有意な体重増加が認められるとともに対象者の平均BMIが25 kg/m2以上となったが、動脈硬化度や血圧は有意な変化を認めなかったという本研究の仮説を支持する結果を得た。一部の対象者は、介入前後に3日間の食事記録をしたため、これを用いて栄養分析を進めている。早々にデータが得られたことから、令和7年度以降に計画していた関連学会におけるデータ公表は、令和6年度から演題登録している。さらに、予定していなかったデータもまとめることができた。観察研究による成果としてアスリートの活動量がピークとなる試合期と活動量が減少するオフ期において身体的特性や血圧・動脈硬化度を計測評価し、微量栄養素を充足した対象者の方が不足している対象者よりも動脈硬化度が低値であるとともに内臓脂肪量も低いことを明らかにした。これについては、令和6年5月に第78回日本栄養・食糧学会において一般口頭演題発表として発表することがすでに決定している。以上のようにデータ公表をすでに行っている点は、計画以上の進捗状況であるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度に予定していたFMD実施に必要な腕部固定ホルダーおよびデータ解析ソフトを購入し、データ収集のために予備検討を実施している。購入に時間を要したため、FMDのデータが収集できていないが、令和6年度からデータを収集できるように予備検討を実施するとともに研究計画を立てている。一方、介入研究については、食事記録分析を実施した管理栄養士との打ち合わせから明らかになった事実として食事記録をもとにした微量栄養素の算出については、概算となり厳密に実施することが難しい事実が明らかになったため、介入研究実施時に対象者に対してマルチビタミンやマルチミネラルを用いて日常の食事量を踏まえて十分量これらのサプリメントを摂取するような介入方法を増量を目指した食事改善介入実施時に併用することで動脈硬化度やFMDに与える影響を明らかにする計画も実行したい。本研究で申請時に掲げているテーマや方法に概ね大きな変更は必要とせずに研究を遂行する計画であり、引き続き令和6年度も介入研究を進めるとともに横断調査も実施する予定である。さらに、得られたデータは随時関連学会や論文化して公表したい。
|