研究課題/領域番号 |
23K10857
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
根本 崇宏 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40366654)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | DOHaD / 低出生体重 / 非感染性慢性疾患 |
研究実績の概要 |
胎生期低栄養により生じる倹約型体質の形成に及ぼすグルココルチコイドの役割を明らかにするために、妊娠全期間にわたり低糖質カロリー制限食を摂餌させた母ラットからの出生時低体重仔をモデル動物として作出した。低出生体重モデルラット (F1世代) はストレス曝露後に血中コルチコステロンレベルの高値持続がみられる。初年度の今年度は、次世代への影響とストレス曝露後のコルチコステロンフィードバックへの栄養介入の効果を明らかにする実験を行った。成長が追いつかない低出生体重モデルラットを父母に持つF2およびその子孫であるF3世代の仔は、妊娠期間中の母ラットに標準固形飼料を自由摂餌で与えても出生時の体重が軽く成長が追いつかない短体長低体重ラットが生じる。そして、これらF2およびF3世代の仔は、F1仔と同様にストレス曝露後に血中コルチコステロンの高値持続と下垂体におけるグルココルチコイドの負のフィードバックに関与する遺伝子 (miR-23とGas5 lncRNA) の発現調節異常がみられた。我々は以前、葉酸やビタミンB12などのメチルドナーを強化したメチルモジュレーター食を出産直後の授乳中の母ラットに1週間与えると、その仔の成長後のストレス応答が一部正常化することを報告した。そこで、本研究では、メチルモジュレータ摂餌授乳母ラットの仔同士を交配させて得た仔 (F2) とその子孫 (F3) で調べると、介入しなかった群に比べ下垂体におけるmiR-23の発現が増加し、Gas5 lncRNAの発現を有意に低下させることがわかった。そして、拘束ストレス曝露後に比較すると、介入しなかったF2とF3世代の仔の血中コルチコステロン濃度は高いレベルを長時間維持するのに対し、介入によりそのレベルが正常化した。以上の成果を国際DOHaD学会の学会誌であるJ DOHaDで発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度から、国際誌に成果発表することができた。このまま継続して成果を出したい。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に次世代への影響と影響介入効果を明らかにできたことから、今年度は下垂体での負のフィードバックの異常により生じる血中コルチコステロンの将来の健康への影響を明らかにする。我々は、低出生体重モデルラットは下垂体のみでグルココルチコイドの応答性が障害されており、他の末梢臓器ではグルココルチコイドに反応するため、糖新生の亢進や血圧の上昇が生じると仮説している。そこで、低出生体重モデルラットのグルココルチコイドに対する反応に対照ラットとの間に差がみられるかを合成グルココルチコイド製剤であるデキサメタゾンを投与して各種臓器における遺伝子発現量を比較する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ使用したが、残額が少なく必要な試薬を購入するには不足したため、次年度の予算を合わせて新たな試薬と飼料を購入する予定である。
|