研究課題/領域番号 |
23K11595
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
佐藤 幸人 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 上席主任調査研究員 (90450460)
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研究分担者 |
吉岡 英美 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (80404078)
安倍 誠 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 上席主任調査研究員 (90450478)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 半導体産業 / 台湾 / 韓国 / グローバリゼーション / グローバリゼーションの反転 / 米中対立 / 地政学的リスク |
研究実績の概要 |
2023年度の最も重要な研究実績は、アジア政経学会2023年度秋季大会(京都大学にて開催)の共通論題「グローバリゼーションとその反転: アジアの半導体関連産業の事例を中心として」において、代表の佐藤幸人と分担者の吉岡英美が報告を行ったことである。共通論題の趣旨は、「米中間の経済対立が半導体関連産業をはじめ、世界経済および経済安全保障にもたらしている影響まで広く論じる機会を設ける」ことであった。 佐藤の報告のタイトルは、「台湾――グローバル化のなかの半導体産業の集中と脱グローバル化における強いられた分散――」であった。報告の前半では、台湾が現在、世界のロジック半導体生産における台湾への集中を示し、それがグローバル化のなかで進行したメカニズムを検討した。後半では、2010年代の終わりから、地政学的要因が重要視されるようになり、台湾への集中が改められ、生産は世界各地に分散されようとしていることを指摘し、分散を進める要因とそれをおしとどめようとする要因について考察し、分散がどこまで進むのかを検討した。 吉岡の報告のタイトルは、「グローバリゼーションと韓国半導体産業――企業戦略と産業政策の展開――」であった。報告では、韓国半導体産業に焦点を当て、グローバリゼーションは反転するかという問題について検討した。最初に、半導体分野で韓国企業がどのように競争優位を維持したかを、代表的企業であるサムスン電子の事例をもとに確認した。次に、2000 年代以降のリスクに韓国がどのように対処してきたかを観察した。続いて、韓国政府が現在の困難な状況を乗り越えるべく打ち出した大胆な半導体産業政策を取り上げ、政策遂行にあたっては国内の社会的・経済的課題の解決がカギになることを提示した。最後に、以上の韓国の事例を踏まえて、グローバリゼーションが反転するかという論点を、半導体産業の視点から考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はおおむね順調に研究を進めることができたと考えている。 第1に、最終成果としては、学術性を持たせつつ、専門家を超えた読者までをターゲットとした図書を作成するというコンセンサスを形成することができた。 第2に、前述のように、佐藤と吉岡がアジア政経学会の秋季大会で報告したことによって、現段階での研究の成果を取りまとめることができた。今後はこれをベースに研究を深めていくことになると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、オンラインおよび対面で議論を行い、研究を深化させる。数カ月に一度、まとまった時間をとって議論するとともに、随時、メール等で情報と意見の交換を行っている。半導体産業は変化がとても速い。新しい展開についてメンバー間で情報を共有し、さらに議論を行って、その意味を考えるようにしている。 第2に、今年度も韓国と台湾で調査を行い、両国の半導体産業への理解を深めつつ、アップデートを図る。 第3に、今年度は半導体産業のリバイバルが進められている九州に集まり、関連する企業や機関を訪ねたいと考えている。特にTSMCの熊本工場は日本と台湾はもちろん、世界的にも大きなインパクトを持ち、それについて精確で深い理解を獲得することは、研究の遂行上、非常に重要であると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は作業の補助員を雇うことを考えていたが、実際にはほとんど使わなかった。また、予定していたデータの購入も見送った。そのため、次年度に使用する経費が発生することになった。 初年度の経験から、内外での調査が最も重要であることが確認されたので、次年度は旅費に重点的に当てていきたいと考えている。
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