研究課題/領域番号 |
23K12154
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
陳 姿因 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20895106)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 事象関連電位 / 超音節 / tone sandhi / アクセント / 連音 / 同化 / 複合語 / 構造予測 |
研究実績の概要 |
本研究は、即時処理における脳波計測(事象関連電位法、ERP)の違反成分を指標にして、複合語の超音節情報がどのように演算されるかを、中国語(北京語)と韓国語を対象にした言語間比較研究を目指したものである。 代表者がこれまでに日本語アクセントと台湾語変調実験で得た知見は、主にERP法による違反成分の観察から得られたものである。しかし、それが音韻規則あるいは構造の予測への違反反応のどちらかを切り分けることはできなかった。今年度は、他の領域における形態素の構造大きさによる神経の同期現象を観察できるfrequency analysis(Ding et al., 2017; Ohta et al., 2023)という分析法に大いに刺激を受けた。ERP法と並行してこの分析法を用いることで、被験者がどの段階でどの構造(単純語か複合語か)として認識するかを観察し、語彙構造に絡む超音節情報の演算を検討するための問題意識をさらに精緻化できると考えられる。そこで、現存データをfrequency analysisで分析する可能性を検討し、台湾大学と共同主催した国際研究会でその結果を報告した。 よって、本研究で計画した中国語と韓国語の脳波実験は、元の実験デザインをベースにした上にfrequency analysisも観察できるように調整することになった。現時点では、実験刺激を作成し、プログラミングをテストしている最中であり、来年度の夏までにデータ収集に入る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度中に達成した成果は以下の通りである:(1)frequency analysis法に詳しい複数の研究者と交流し、分析プロセスを習得した。(2)既存のデータとともに、本実験と類似する実験デザインをfrequency analysisで分析する可能性を検討し、NTU-UT Linguistic Festa 2023で発表した。(3)横断研究の比較対象とする日本語の複合語アクセント実験で得られたデータをまとめ、日本語の複合語アクセント不適用条件では遅い陽性波が、過剰適用と語彙記憶違反条件では陰性波が観察された結果を2024年のJapanese and Korean Linguistics Conferenceに投稿した。ただし、frequency analysisも観察できるようなデザインに調整するため、本年度中に始める予定だったデータ収集は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
報告を提出した現時点では、実験刺激を作成し、プログラミングのテストの準備を進めているところである。代表者の所属が変わったため、実験を実行する時間が大幅に制限されることになるが、長期休暇期間中に集中的にデータを収集できるよう努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
1
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備考 |
代表者は世話人として、台湾大学と共同開催した国際研究会である。
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