研究課題/領域番号 |
23K13470
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
高木 悠里 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 講師 (20964894)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 重層的景観像 / 景観マネジメント / 営みの景観 |
研究実績の概要 |
当該年度(2023年度)は,景観に関する諸制度の重層的な運用状況について,全国調査と先進事例調査を実施した。 全国調査では,景観に関する制度の代表である景観計画と重要伝統的建造物群保存地区(以下,重伝建地区)の重層的な指定・運用状況について,計画書等の文献調査を行った。全国126の重伝建とその周辺を調査し,景観計画の重点地区等を重層させている56地区を抽出した。「区域形状」と「規制・誘導等」に着目し,2つの制度の重ね合わせ方法を調査するとともに,そこにおける市街地種別や市街地形態等との関係を分析した。その結果,規制・誘導等においては,定性的基準による景観像の解説・抽象化と定量的基準による補強・担保等が重ね合わせられており,市街地の成り立ちや発展過程,周辺の景観資源等がその重ね合わせ方法と関係があることを示唆した。これらを踏まえて,56地区の類型化を試みた。 また,今後の詳細調査の枠組みを明確化することを見据えて,富山駅北地区を対象に先進事例調査を実施した。富山駅北地区において都市整備が進められた1980年代以降を調査対象期間とし,景観計画をはじめ中心市街地活性化や都市再生に係る諸制度の適用状況を調査した。次に,諸制度と関連する各種計画書を1980年代~現在のものまで収集し,その記述内容から「景観像」が重層的に確立されていくプロセスを分析した。その結果,富山駅北地区の「景観像」として,「高質な空間整備」に加え,「都市活動による賑わい」や「人々の営み」が包含されていったことを解明した。この「景観像」を実現するための景観マネジメント活動の実態として,地元エリアマネジメント団体の組織体制,活動プロセス,景観調整の実態等を関係者ヒアリングや現地調査により解明した。 今後は,全国調査で得た類型や,先進事例調査における景観像の分析方法等を活用し,詳細調査を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記した当該年度の研究スケジュールに沿って調査・分析を進めることができ,次年度の詳細調査に向けた類型化,詳細調査の枠組みの立案まで進展することが可能となったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,全国調査で得た類型に基づき,詳細調査を進める。また,全国調査の対象に歴史まちづくり法や中心市街地活性化等を加えて,景観に関する諸制度の重層的な運用状況をさらに幅広く収集・分析し,類型を深化させる。 詳細調査においては,諸制度とこれに基づく各種計等から重層的な「景観像」の確立プロセスを解明したうえで,そこにおける諸制度の役割分担等について研究する。役割分担は,制度の使い方と景観マネジメント活動の両面から調査するが,次年度(2024年度)は,特に制度の使い方に関する調査を重点的に進める。具体的には,定性的基準による景観像の解説・抽象化と定量的基準による補強・担保等の内容を調査・分析する。
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