陽子線治療の水吸収線量の測定深としては、SOBP中心とプラトー領域の2つの選択肢がある。そのため、どちらのビームに対しても出力線量評価が可能となるように、今年度はSOBP領域の中心とプラトー領域の両方の位置においてアラニン線量計に照射を行い、アラニン線量計の応答特性を明らかにする予定であった。しかし、実験を行うには実際に陽子線治療を行っている医療機関の協力が必須であり、国内で陽子線治療の線量計測を主体的に行える組織が無かったため、今年度は日本国内で陽子線治療の線量計測を実施するための組織作り及び陽子線治療の出力線量評価のプロトコル作成に注力することにした。 陽子線治療の線量計測のための組織作りにおいては、国内の陽子線治療施設や線量計測に係る民間企業に声をかけ、多くの施設にご賛同・ご協力いただき、組織することができた。また、組織内において、重要な事柄を話し合うための委員会を組織し、アラニン線量計等を使って陽子線の出力線量評価を実施するためのプロトコル作成のために、何度かオンラインミーティングを実施し、プロトコルの作成を行った。 また、多くの組織にご協力いただけたため、陽子線の出力線量評価を実施する際に、かなり多くの数のアラニン線量計を読み取る必要がある可能性が出てきた。アラニン線量計を電子スピン共鳴(ESR)装置で読み取る際に、信号を読み取る部分は自動化できていたものの、アラニンペレットをESR装置内に供給し、排出する部分についてはまだ自動化できていなかった。多数のアラニンペレットを読み取る場合、全自動で行うほうが望ましいため、ペレットの供給・排出の自動化装置を導入した。これにより、アラニン線量計の測定が基本的に全自動で行えるようになった。
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