研究課題/領域番号 |
23K15179
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渋谷 里紗 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90778408)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肺癌 / CAR-T細胞 / メタボローム |
研究実績の概要 |
肺癌表面のAxlをターゲット抗原として認識するCARをJurkat細胞に遺伝子導入し、作成したCAR-Jurkat細胞を作成した。CAR-Jurkat細胞がAxl特異的に活性化することを確認するために、Axl強制発現K562細胞との共培養を行った。Axl強制発現K562細胞と共培養することによって、CAR-Jurkat細胞におけるエフェクターマーカーの発現が上昇することをFACSで確認した。また、IFNgやTNFaなどのサイトカインが、Axl強制発現K562細胞との共培養によって分泌誘導されることを、ELISAにより確認した。 次に、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI)の治療効果に影響を与えるメタボロームを明らかにするために、メタボローム解析を行った。当院で診断された内科的治療前の肺腺癌患者を対象に、遺伝子変異の有無、病期、治療およびその効果などの臨床情報を収集し、メタボローム分析を行った。殺細胞性抗癌剤とICIの併用療法においては、Partial Response (PR) 群でPhosphatidylcholineやSphingomyelinが高値である一方、Stable Disease (SD)/Progressive Disease (PD) 群でLysophosphatidylcholineが高値であった。Pathway解析においてPR群でSphingomyelinの合成経路が活性化していた。また、PR群とSD/PR群間で差があった代謝物の高低に着目し、高値群と低値群の間でPFSを比較したところ、PC ae C42:2、SM C24:1が高値である群が、低値である群と比較して、殺細胞性抗癌剤とICIの併用療法下でのPFSが長いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2023年度に前向きに検体収集を行い、メタボローム解析は2024年度に予定していた。しかし、検体の収集率が良好ではなく、また、年内に治療効果判定まで可能な症例はさらに少ないことが明らかとなった。そこで当初の予定を変更し、保存されていた検体を使用した後ろ向き解析を行うことにした。保存検体を使用することで、メタボローム解析に十分な数の検体を確保でき、治療効果との関係も調べることができた。解析の結果、ICIの治療効果に関与するメタボロームの代謝経路を同定することに成功した。 以上のことから、前向きデザインから後ろ向きデザインへの変更はあったものの、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
メタボローム解析で同定された代謝物が、ICI治療中のT細胞の細胞障害能に影響を与えている可能性が考えられるため、今後は作成したCAR-Jurkat細胞においてSphingomyelinの合成経路を活性化するような遺伝子改変を加え、Axl強制発現K562細胞との共培養実験を行い、活性化マーカーの発現やサイトカイン産生能、肺癌細胞に対する殺傷能力を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入額を予定よりも抑えることができたため、次年度使用額が生じた。今後の実験や解析に使用予定である。
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