研究課題/領域番号 |
23K16818
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三宅 浩太郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80726787)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 老化細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、放射線照射を受けた細胞株に対して、幅広い遺伝子発現の変化を解析することに注力した。まず、複数のがん細胞株および非がん細胞株を対象に、放射線による影響を受けやすい遺伝子の発現パターンを比較検討した。その結果、放射線照射後に発現量が増加する複数の遺伝子を同定することができた。これらの遺伝子の中から、特に細胞表面マーカーとして機能する可能性が高い遺伝子を選出し、その機能についてさらなる分析を進めた。 選出された遺伝子の発現増加が実際に放射線照射によるものであることを確認するために、FACS(蛍光活性化細胞分析)やウェスタンブロッティングなどの手法を用いて詳細な検証を行った。これらの実験を通じて、放射線照射によってこの遺伝子の発現が確かに増加することを確認した。 さらに、我々はこの発見を臨床応用に結びつけるため、in vivoで使用可能な抗体を取得した。この抗体は、上記の細胞表面マーカーに対して高い特異性を持ち、光免疫療法における細胞障害効果を促進する可能性がある。肺癌細胞株を用いたin vitro実験では、放射線照射前にはこの抗体を用いた光免疫療法で細胞障害効果はほとんど観察されなかった。しかし、放射線照射後には、同治療法による細胞障害効果が顕著に増大することが確認された。 この効果はin vitroだけでなく、ゼノグラフトモデル(ヒトのがん細胞をマウスに移植したモデル)を用いたin vivo(生体内)実験でも観察されています。放射線照射後のゼノグラフトモデルにおいても、光免疫療法が有効であることを示す結果が得られつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
老化細胞特異的な表面マーカーについて特定することに成功し、一部光を用いて老化細胞除去に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はin vivoにおいて「放射線照射後に細胞障害効果が出現すること」や、他の老化細胞株モデルでの評価、さらに臨床検体を用いて老化細胞に遺伝子Xが発現していることなどを確認しながら、local senolysis治療の可能性を開拓していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験順序の変更等があり、2023年度に支出しきれなかった予算が生じたために次年度に繰り越した。2024年度にはシングルセル解析を追加することにより実験を発展させる予定である。
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