研究課題/領域番号 |
23K16992
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宇野 光平 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (50873585)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | プロテオーム解析 / 擬似時間推定 |
研究実績の概要 |
がんをはじめとする疾患のバイオマーカー探索は、トランスクリプトーム解析やプロテオーム解析で積極的に研究されている。しかし、臨床的に有用な解析技術の開発は未だ重要な課題となっている。主要なバイオマーカー探索手法として、疾患群と対照群のタンパク質発現量を比較する発現変動解析などが用いられるが、疾患の早期発見のためには疾患の前段階である未病状態を発見することが重要である。そのためには疾患群と対照群の比較ではなく、新たなフレームワークによるアプローチが必要となる。そこで、健康状態から疾患状態に至る過程をモデリングすることで、二群比較の問題点を克服し未病状態を発見するためのプロテオーム解析基盤を構築する。 健康状態から疾患状態に至る過程をモデリングするアプローチとして擬似時間推定手法を採用した。擬似時間推定手法は主にシングルセル解析などで用いられる手法であり、サンプルである1細胞ごとの発現量データをUMAPなどにより低次元空間上に可視化する。そして、低次元空間上の各細胞を経由する軌跡を推定することで、細胞が分化するプロセスを擬似的に再現する。しかしながら、これまでの擬似時間推定手法は疾患の進行を適切には再現できない可能性がある。なぜなら従来の低次元空間への可視化としてUMAPなどの教師なし学習が用いられているため、疾患の進行を表すようなラベル情報を反映することはできないためである。そこで、ラベル情報を活用した教師あり学習に基づく擬似時間推定手法の開発を進めることで、疾患進行をモデリングする解析基盤を構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん関連の大規模プロテオームデータであるCPTACを用いて、擬似時間推定手法が疾患の進行を表現できることを検証している。また、既存の先行研究として教師あり学習であるスパース順序ロジスティック回帰を用いた疾患進行モデルであるpsupertimeの性質も検証を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はがん関連プロテオームデータだけではなく、がん関連マルチオミクスデータや多様な疾患オミクスデータなど活用するデータの範囲をひろげて解析を進めることで提案手法の有用性を示す。また、psupertimeとの差別化を図るためにスパース順序ロジスティック回帰が有効ではない場面でも利用できる手法の開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では初年度から学会での発表を予定していたが、都合により発表を見送った。そのため学会参加に関わる費用は次年度に使用することとした。
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