研究実績の概要 |
本研究の目的は、分離等の前処理を行わずに、胃癌患者の洗浄腹水をダイレクトに質量分析(MS)を用いて解析し、①洗浄腹水に含まれる予後不良因子を探索、②予後判定モデルを確立し、術後抗がん剤治療の個別化に貢献することである。
これまでに、関連5施設(聖隷浜松病院、島田市立総合医療センター、藤枝市立病院、富士宮市立病院)および浜松医科大学附属病院から、胃癌患者の腹水サンプルを合計60サンプル回収することができ-80℃のフリーザーで保管した。これらの全症例をフィルターによる処理後、オンライン脱塩チューブ(ソルナックチューブ)を使用し質量分析装置(SynaptG2 Waters)にてダイレクトに測定を実施した。測定はpositive ion mode, negative ion mode それぞれについて問題なく終了し、測定結果についても各症例ともそれなりのピークが確認され、解析を実施するのに十分な測定結果が得られているものと考えられた。
現在、各症例について胃癌fStage(I~IV)、組織診断の結果(CY+、CY-)等によりグループ分けを行い、CY+群や高ステージ群において、CY-や低ステージ群より有意に強く検出される分子の探索を行っている。StageⅠ&ⅡとStageⅢ&ⅣでVolcano plotを作成したところ、StageⅢ&Ⅳ群において有意に強く検出されるm/zが確認された。また、ある種の脂肪酸に該当するm/zではStageの進行と共に増加する傾向を認めた。
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