研究課題/領域番号 |
23K17593
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
井上 雅彦 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20252819)
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研究分担者 |
岡西 徹 鳥取大学, 医学部, 准教授 (00510273)
二俣 泉 昭和音楽大学, 音楽学部, 教授 (70349984)
松田 壮一郎 筑波大学, 人間系, 助教 (90762675)
山中 智央 島根大学, 学術研究院教育研究推進学系, 講師 (60983228)
山口 穂菜美 島根大学, 学術研究院教育学系, 助教 (90754820)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 発達障害 / ペアレントトレーニング / 遠隔技術 |
研究実績の概要 |
全体の研究計画に沿って初年度は主に場面緘黙児の成育歴の中での親の困難や支援ニーズに対して調査を行った。 研究1:目的 場面緘黙児の親には、子どもの場面緘黙が生活のあらゆる側面に影響を及ぼすことや、場面緘黙症状の理解が得られないこと、将来への心配など様々な悩みがある。しかし、場面緘黙児の親の悩みがどのような時期に強くなるのか、そして、場面緘黙児の親が最も困っている時期にどういった支援ニーズが強く生じるのかを検討した研究は乏しい。方法 本研究では、場面緘黙児を持つ親70名(SD = 7.01、範囲29~63歳)を対象に、場面緘黙児の親の就学段階ごとの悩みと、場面緘黙児の親が最も困っている時期に強く生じる支援ニーズについて調査し分析した。結果 場面緘黙児の親は、小学校および中学校段階で悩みが有意に高くなり、高等学校、それ以降の時期に移行するにつれ悩みが減少していく傾向が示された。また、場面緘黙児の親が最も困っている時期には「場面緘黙を理解してくれる支援者の存在」と「学校の先生からのサポート」といった支援ニーズが顕著に求められていることが示された。さらに、子どもの診断状況の違いによっても場面緘黙児の親が求める支援ニーズも異なっていた。したがって、保育園や幼稚園に在籍する段階から場面緘黙児とその親に介入し、適切なサポートを提供することが、場面緘黙児とその親の将来的な精神的健康を維持することに寄与すると考えられた。 研究2その他:場面緘黙児の親を対象とした遠隔ペアレントトレーニングに関する事例研究、場面緘黙児本人を対象とした遠隔音楽療法の事例研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の研究目標であった調査を終了し、その結果、保育園や幼稚園に在籍する段階から場面緘黙児とその親に介入し、適切なサポートを提供することが、場面緘黙児とその親の将来的な精神的健康を維持することに寄与することが示唆された。本結果は英文論文にまとめ国際誌への投稿準備を進めている。 また本研究の基礎となる遠隔ペアレントトレーニングの研究も国際誌に掲載され、次のステップとなる場面緘黙児の親に対するペアレントトレーニングの事例研究も投稿中である。遠隔音楽療法に関する介入に関する研究も、本年度の日本精神神経学会シンポジウムにて事例研究を発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究結果をベースにして場面緘黙児(3-6歳)の親15組に対して、緘黙の特性や対応に関する心理教育とかかわり方、段階的エクスポージャーを含むオンラインによるペアレントトレーニングを行う。その後、親子ペアでの遠隔音楽療法を実施し、音楽遊びの中で段階的エクスポージャーを用いて発話ややり取りを促す。ペアレントトレーニングと合わせて実施することで日常場面の般化にも大きな期待が持てると考える。測定尺度としては日本版育児ストレスインデックスPSI(奈良間ら1999)、日本版ベック抑うつ質問票BDIⅡ(小嶋ら2003)、肯定的・否定的養育行動尺度PNPS(辻井ら2018)、子どもに対して、日本版場面緘黙質問票SMQ(園山,2018)、子どもの行動チェックリストCBCL(船曳ら2017)、日本語版アイバーグ子どもの行動評価尺度ECBI(加茂ら2016)、音楽療法中のかかわり行動や発話行動である。尺度による測定は事前、PT後、音楽療法後、3か月後の評価を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、調査研究を主体としたため、音楽療法の支援者養成と場面緘黙に併存しやすい小児精神疾患の診断などに関わる研究分担者の二名の役割が乏しかったため繰り越しが生じた。次年度に関しては、これらの分担者は支援者の訓練、介入時の研究協力者と児童の評価などの役割分担が生じるため、これに充当する予定である。
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