研究課題/領域番号 |
23K17793
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
岸本 弘立 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (30397533)
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研究分担者 |
芹澤 久 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (20294134)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | SiC / ホウ化ジルコニウム / 断熱材 / 傾斜構造材料 |
研究実績の概要 |
本年度はZrB2を主成分とする表面部の焼結温度と焼結状態の相関関係の取得、およびZrB2を主成分の表面部から、SiC多孔質に変化する傾斜構造を不要可能かの予備試験を行った。 ZrB2粉末のみとZrB2-30at%SiCの粉末を混合した粉末について、焼結体の試作をアルゴン雰囲気で1800℃から2200℃の範囲で実施した。2200℃での焼結体はZrB2、ZrB2-30at%SiCの双方の焼結体に多くのクラックが入って脆く、焼結温度が高すぎたものと推定された。1800℃および1900℃程度では十分な強度があり、走査電子顕微鏡で観察したところZrB2粒子の形が明瞭に観察されており、焼結温度としてはやや低い可能性が示された。 傾斜構造付与の予備試験は最表面のZrB2のみからなる表面層から将来的に断熱層となる酸化除去する炭素ビーズを含んだSiC層までの傾斜構造を付与した一体成型材料が製作可能かの試験を行った。①ZrB2 ②70ZrB-30SiC ③30ZrB2-40SiC-30C ④50SiC-50Cの4層で1900℃で成型を実施した。①~③の層までは問題なく成型できたが④の層は上層と分断されて崩壊した。 複合則の式を用いて各層の熱膨張率を概算すると①6.6②6.1③5.1④3.7(×10-6/K)となり、④の層は③の層よりも熱膨張率がかなり小さくなる。SiC、グラファイトカーボンとも熱膨張率では4.5×10-6/K程度で同等であるはずだが、SiCと炭素で剛性率等機械特性が大きく異なる点が体積弾性率に影響する。そのため50at%ずつ混合すると④の層の熱膨張率3.7×10-6/K程度となり、上層と差が生じる。このためSiC-Cの最上層は炭素を減らして③の熱膨張率に近づけ、改めてSiC-Cの中でも順次Cの量を増やす傾斜構造を付与する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去の研究でSiCのついての経験は豊富であったが、ZrB2の焼結の経験がほぼ無かったため、使用する機材の性能上限まででZrB2層の焼結が可能か不明瞭であった。本年度の実験で焼結温度が最大でも2200℃であることが示された。 SiC主成分の層がZrB2主成分の層と接合されるのかも不明瞭であったが、本年度の条件で見る限り支障はなさそうである。SiCの焼結助剤は気孔形成用のカーボンビーズに焼結助剤の役割が期待できない場合は液相焼結助剤を用いる考えであったが、現状においてはカーボンビーズに焼結助剤として機能していると思われる。 将来的な酸化除去プロセスのためにZrB2の焼結材の電気伝導を確認したが、焼結ママ材では通電する。ただし大気中で高温で保持するとZrO2が形成され電気抵抗が極めて大きくなる。 以上の通り、懸念事項は概ね問題がなく計画は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
まずSiC-CのC成分を減らして熱膨張率を上層と近づけ、安定して一体成型できる条件を焼結温度1800℃から2200℃までの間で探求する。 また酸化除去試験の予備試験を実施し、大気中で通電することで炭素が酸化されることを確認する。可能なら温度計測を行い、酸化除去試験時の温度とカーボンビーズの添加量や形状の相関を明らかにしていく。熱的特性取得の準備も開始し、本年度は熱伝導度測法を平板法を中心に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試験片を加工業者に依頼したが業者の都合により納期が長期に及ぶことになったため、加工費用133,744円を次年度に持ち越すことになった。同加工は次年度に実施する。
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