研究課題/領域番号 |
23K17798
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
廣田 光智 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (50333860)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 熱可逆性ゲル水溶液 / 消火カプセル / 内部起爆 / 森林火災 / 消火戦略 |
研究実績の概要 |
水よりも少ない量で消火や延焼抑制が可能な熱可逆性ゲル水溶液(熱ゲル水溶液)を広範囲に散布して森林火災などの広域火災を消火する次世代消火戦略の確立を目指して,カプセルに熱ゲル水溶液を入れて内部起爆する方法において,内部起爆の威力に合わせたカプセルの最適化が目的である。2023年度は,特にカプセルの形成と,電気導火線による内部からの起爆に関して調査を行い,以下のような結果を得た。 1)熱ゲル水溶液を,質量濃度を変化させて試作する計画であったので,まず質量濃度に対する熱ゲル水溶液の粘度を測定した。メチルセルロースの質量濃度が0%から4%まで増加するほど,粘度が1mPa・sから2000mPa・s程度まで指数関数的に増加することが分かった。また3Dプリンタで作成した球形の型に熱ゲル水溶液を入れて冷却することでカプセル化した。 2)試作したカプセルの硬さなどの特性を、テクスチャー試験機によって測定した。加熱によって融解して硬度が低下し,さらに加熱を続けると60℃近傍で急激に粘度が増加することがわかった。また,ハロゲンスポットヒーターを用いて加熱した場合,融解して低粘度水溶液となってから表面が白濁し膜状になった。あらかじめろ紙に熱ゲル水溶液を浸透させたのちにスポット加熱した場合は,初期粘度が高いほどろ紙へ着火するまでの時間が増加した。さらに,試作したカプセルの断面は,加熱度合いによって内部まで硬化が進むため中空のカプセルを作成した後に熱ゲル水溶液を注入するなどの工夫が必要であることが分かった。 3)試作したカプセル内部から電気導火線で起爆させ,その様子をハイスピードカメラで観察した。カプセル表面の硬度が大きいほど,内部からの起爆で破裂後に飛散する規模が大きくなることが分かった。ただし,カプセル外殻の厚みが厚い場合は起爆力が弱く,破裂させることができないケースもあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は当初の予定通り,1)熱ゲル水溶液によるカプセルの試作,2)試作したカプセルの硬化耐久試験,3)試作したカプセルの内部からの電気導火線による起爆を一通り行った。現状の問題点は,カプセルの大きさを自由に変えられないこと,内部からの起爆で飛散する領域に偏りがあること,カプセル形状によって飛散特性が異なることである。これらの問題点を解消するために,大きさや肉厚を変えたカプセルの試作を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
現状の問題点から,いくつかの検討事項が新たに追加された。まずこれらの追加事項を継続的に調査する。2024年度以降は,1)熱ゲル水溶液によるカプセルをより大きく試作し,2)試作したカプセルの硬化耐久試験を行うとともに,3)試作したカプセルの内部からの起爆を電気導火線あるいはアジ化銀ペレットで行い起爆力を変えることを中心に調査を進める。
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