研究課題/領域番号 |
23K18755
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
譚 天 東北大学, 法学研究科, 助教 (30982467)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 急進右翼政党 / 権威主義国家 / プーチン体制 / 習近平体制 / 外交関係 |
研究実績の概要 |
欧州急進右翼政党の外交政策の主要原則には、主権主義、自民族中心主義、反多元主義、反グローバリズムなどが挙げられる。これらの政党は、EU、NATO、アメリカを国民国家の敵と見なしている。一方、2010年代以降のプーチン体制も、反米主義、領土回復主義、同性愛嫌悪、法と秩序の強調といった急進右翼的な要素を特徴としており、権威主義的で反自由主義的な国内政策と、主権主義的で反西洋主義的な外交政策を施行することで、ヨーロッパ保守主義の先駆けとしての新たな国家イメージを確立しようとしている。結果的には、ロシアと欧州急進右翼政党の間には、共通のイデオロギーや価値観、アジェンダを基にした親密な関係が形成されている。また、この関係は、①政治的訪問、②EUでの投票行動、③選挙監視員の派遣、④財政的・人的支援、⑤公式協力関係の5つの側面で特に顕著である。
さらに、近年、グローバルな影響力とEUにおける影響力が高まっている中国も、西洋文化圏外の国でありながら、イデオロギーや戦略目標でロシアと高い類似性または近接性があることにより、ロシアに似ており、一部の欧州急進右翼政党とは良好な関係を構築するようになっている。また、この関係も、①政治的訪問、②EUでの投票行動、③財政的・人的支援の3つの側面で顕著である。
以上のように、ロシアをはじめとする権威主義国家と欧州急進右翼政党との間の親密な関係は、欧州や北大西洋統合に対して重大なリスクをもたらしているため、今後も引き続き注目されるべき重要な課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね順調に進んでいる。2023年度中には、本研究課題に基づく学会・研究会報告を2件実施し、書評1本(招待あり)を執筆した。また、現時点で査読中の論文が1本、執筆中の論文が2本、実施予定の学会報告が2回ある。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度中、本研究は主に政権与党としての急進右翼政党の国内における統治能力に注目する。まず、政権入りを果たした急進右翼政党への閣僚配分の特徴を分析する予定である。閣僚配分はパトロネージの機能を果たすたけでなく、将来の特定の政策の制定および実施にも大きな影響を与えるため、連立政権の形成過程の核心的な段階を成す。急進右翼政党への閣僚配分の特徴を分析することは、それらの政党の統治能力への考察に重要な意義を持つ。
次に、本研究は、新型コロナ時期における急進右翼政党が参画した連立政権の執政パフォーマンスを国際比較の視点から考察する。従来の研究は、公衆衛生に関する喫緊の課題に追われる各国政府の中、ポピュリズム的な色彩を帯びる政府の対応への国際社会の評価は最も低いと指摘している一方、一部の権威主義的な性格のある政府は、公衆衛生の向上を促進できるという観点も存在する。ポピュリズムと権威主義の両方の特徴を有する急進右翼政党が政権与党として公衆衛生分野にどのような影響を及ぼすかについては、まだ十分に検討する余地がある。
これからは、以上の2つの課題を遂行するために、海外調査(1回)、学会・研究会報告(1~2回)、論文執筆(2本)を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度中に諸事情により、他都市で開催される学会・研究会に参加しなかったため、次年度使用額が生じた。この額を2024年度に、大阪で開催される日本比較政治学会および名古屋で開催される日本政治学会にて報告する際に使用する予定である。また、2024年度の助成金を、必要な研究資料や機材を除き、英語論文の校正料のためにも使用する予定である。
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