研究課題/領域番号 |
20H01815
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
宮地 晶彦 東京女子大学, 現代教養学部, 研究員 (60107696)
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研究分担者 |
古谷 康雄 東海大学, 理学部, 特任教授 (70234903)
田中 仁 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 講師 (70422392)
冨田 直人 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (10437337)
筒井 容平 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40722773)
澤野 嘉宏 中央大学, 理工学部, 教授 (40532635)
小林 政晴 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30516480)
中井 英一 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (60259900)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 調和解析 / 実関数論 / 関数解析 / 関数方程式 / 関数空間 |
研究実績の概要 |
多重線形の擬微分作用素の理論で、シンボルの導関数が決まった関数で抑えられるS_{0,0}と呼ばれるクラスのシンボルを持つ多重線形擬微分作用素に対して、Lebesgue空間、Hardy空間、BMO空間の相互間での有界性を指数に関する臨界の条件の下で示すことができ、結果を論文にまとめて発表した。これは双線形の場合に我々が既に得ていた結果を多重線形の場合にまで一般化したものである。この研究では、時間周波数解析の理論を参考にして考察を進め、時間周波数解析で用いられるアマルガム空間と呼ばれる関数空間を利用したことが重要な鍵となった。 特異積分作用素や分数階積分作用素の理論を一般化する研究を進めた。これまでに知られていたMorrey空間や弱Morrey空間での特異積分作用素の理論を、Orliczノルムを使って定義されるOrlicz-Morrey空間および弱Orlicz-Morrey空間にまで拡張した。分数階積分作用素の理論を、一般の重み関数に関して定義される一般の積分作用素に拡張した。MuckenhouptのA_p条件を一般のYoung関数を使ったモジュラー不等式の場合にまで拡張した。 非負関数に関する不等式の研究で、Hausdorffコンテントにより定義されたLebesgue空間の共役空間の理論の基礎付けとなる一つの共役不等式に新たな証明を与えた。これまで2進立方体の族の持つ入れ子構造を基礎として展開されていた2進立方体の理論を、直方体の族の場合に一般化し、それを利用して定義される非負の作用素に対して新たな不等式を得た。 関数のメディアン、最大関数、関数の再配列について、一般論を整備し、新たな形の最大関数不等式などについて理論をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多重線形擬微分作用素など、調和解析に現れる多重線形特異積分作用素の研究は、本研究の大きな課題のひとつであるが、HormanderクラスS_{0,0}のシンボルをもつ多重線形擬微分作用素の有界性について、臨界指数の場合の精密な結果を得ることができた。 非負関数に対する多重線形の不等式を調べることも本研究の大きな目標であるが、これに関して、これまで2進立方体の族を利用して展開されていた理論の一部を2進直方体の族にまで一般化できたことは今後の研究の大きな助けとなる。また、Hausdorffコンテントによって定義されるLebesgue空間を用いて新しい形の評価を得る可能性が見えてきた。 調和解析に登場する種々の関数空間を調べることに関しては、多重線形の特異積分作用素や多重線形分数階積分作用素の評価の研究に関連して、時間周波数解析の理論やモデュレーション空間などの関数空間を利用することが有効であることがわかった。また、Morrey空間、アマルガム空間、スパース作用素など、調和解析に頻繁に現れる関数空間や作用素に関して、それらの一般的な性質に関わる研究も進展した。 実関数論と調和解析の結果と方法を関数方程式の解析に利用することに関して、Navier-Stokes方程式、Schrodinger方程式、Airy方程式などの偏微分方程式に対して、短時間Fourier変換や種々の関数空間を利用した解析を展開することができた。これらは今後の発展につながると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
多重線形の擬微分作用素の研究に関しては、これまでにS_{0,0}クラスの擬微分作用素に対してほぼ最終的な結果が得られた。最近Rodriguez-Lopezらによって、良い性質を持つシンボルに斉次1次の相関数をもつ振動項を入れた特殊の双線形擬微分作用素に対してはS_{0,0}クラスの一般論から出る評価よりも良い評価が成り立つ、という結果が得られている。これは線形の場合には古くから知られた結果であるが、Rodriguez-Lopezらの研究は線形の場合を双線形作用素の場合へ拡張したものである。今後は、Rodriguez-Lopezらの研究に関連した振動項を含むシンボルの場合の研究を進めたい。この研究は、宮地、冨田、古谷を中心として進める。 非負作用素や非負関数に関する不等式の研究では、主に田中が中心となって進めてきたHausdorffコンテントや2進直方体に関する研究を、今後も田中が中心となり、古谷と澤野も協力して、実関数論の方法と種々の関数空間の方法を取り入れながら、研究を進める。 調和解析に現れる関数空間の研究では、今後も種々の関数空間に対して詳しい研究を進める。擬微分作用素の研究で我々が見出した新たなクラスは、Morrey空間と関連があるように見られるので、澤野、宮地、冨田、中井が協力して精査する。 実関数論の方法や調和解析の結果と方法を関数方程式の解析に応用する研究は、今後も引き続き、筒井、小林、澤野が中心となって進める。 解析学関連の研究集会やセミナーにおいて解析学の広い分野の研究者と最近の研究に関して研究連絡・研究討論を行う。研究集会などに本研究の代表者・分担者が出席するだけでなく、研究協力者にも出席を依頼して研究連絡・研究討論を行う。
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