研究実績の概要 |
3年目となる令和4年度は昨年度にまでに作成したSNATファミリー遺伝子の新規KOマウスラインを用いて、それぞれの遺伝子KOが胎盤および胎児の発生へ与える影響を解析した。 (1) Slc38a1, Slc38a2, Slc38a4のトリプルKOマウスの作製および解析。 SNATファミリーをコードするSlc38a1, Slc38a2,Slc38a4の3遺伝子の全領域を欠損するマウスライン(SNAT KO)を解析したところ、SNAT Null KO胚は着床直前の胚盤胞期までは正常に発生するものの、着床後の早い段階で胎性致死を示すことが分かった。また、父方からKOアリルを引き継いだSNAT paternal KO (PKO)マウスは約半数が胎生致死を示すが、残りの半数は体重が40%程度低下した状態で出生した。これらの出生胎仔は完全な生後致死を示した。Slc38a4単独のPKO個体も体重低下および生後致死を示すものの、2-3割程度の個体は成体まで発育するため、Slc38a4 PKOではSlc38a1およびSlc38a2が機能補償していることが明らかになった。さらに詳細なメカニズムの解析を行うため、SNAT KO胚盤胞から胎盤幹細胞(TSC)を樹立した。 (2) SNAT遺伝子の胎盤特異的コンディショナルKO(cKO)マウスの作製。 Slc38a4単独の胎盤特異的cKOマウスを作成し、Slc38a4の胎盤での機能欠損が胎児発生に与える影響を解析した。Slc38a4のExon4を挟む形でloxpを二か所に挿入したfloxマウスについて、胎盤特異的および胎仔特異的にCreを発現するマウス系統と交配し、それぞれの組織特異的にSlc38a4をKOしたときの表現型解析を進めた。
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