研究実績の概要 |
本年度はこれまでに作出したSNATファミリー遺伝子の新規KOマウスラインを用いて、それぞれの遺伝子KOが胎盤および胎児の発生へ与える影響を解析した。 (1) Slc38a1, Slc38a2, Slc38a4のトリプルKOマウスの作製および解析。 昨年までに作出したSlc38a1, Slc38a2,Slc38a4の3遺伝子の全領域を欠損するマウスライン(SNAT KO)の解析を進めた。SNAT Null KO胚は着床後の早い段階で胎性致死を示す一方で、SNAT paternal KO (PKO)マウスは出生後に完全な生後致死を示した。Slc38a4単独のPKOは2-3割程度の個体は成体まで発育するため、Slc38a4 PKOではSlc38a1およびSlc38a2が機能補償していることが明らかになった。SNAT PKOマウスとSlc38a4 PKOマウスそれぞれの胎仔の血中アミノ酸濃度を測定したところ、野生型と比べて有意にアミノ酸濃度が低下しており、いくつかのアミノ酸はSNAT PKOで大きく低下していたためこれらの血中アミノ酸濃度の低下が出生後致死の原因である可能性が示唆された。 (2) SNAT遺伝子の胎盤特異的コンディショナルKO(cKO)マウスの作製。 Slc38a4のExon4を挟む形でloxpを二か所に挿入したfloxマウスについて、胎盤特異的(Tpbpa-Cre)および胎仔特異的(Lefty2-Cre)にCreを発現するマウス系統と交配し、それぞれの組織特異的にSlc38a4をKOしたときの表現型解析を進めた。Lefty2-Creマウスでは予想に反して胎盤側でも組換えが生じていたため、Sox2-Creマウスを導入して検証を進めている。また、Slc38a1, Slc38a2, Slc38a4を挟む形でloxpを二か所に挿入したSNAT floxマウスの作製にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず計画していた通り、SNATファミリー遺伝子のトリプルノックアウトマウスの解析を進めることができた。その結果、SNATファミリーNull KOは着床後の比較的早い段階で胎性致死を示すことが明らかになった。また、SNAT PKOマウスは全て出生後致死となり、Slc38a4 PKOよりも重篤な表現型を示すことから、SNATファミリー遺伝子間に相互補償するシステムがあることが示唆された。さらに予定していた通り、SNAT PKOマウスおよびSlc38a4 PKOマウス胎仔血漿のメタボローム解析を進め、SNATファミリー遺伝子間に実際に相互補償システムがあること、そして特定の血中アミノ酸濃度の低下がSNAT PKOマウスでみられる生後致死の原因である可能性を示すことができた。 また、コンディショナルノックアウトについてはSlc38a4-Ex4-floxマウスがCre依存的にSlc38a4の機能欠損を起こすことを確認した。Slc38a1, Slc38a2, Slc38a4の3遺伝子をloxpで挟んだSNAT floxマウスの作出にも成功した。これらのマウスと胎盤特異的なCreマウス(Tpbpa-Cre)、および胎仔特異的なCreマウス(Lefty2-Cre)との交配を進めたが、Lefty2-Creマウスでは予想に反して胎盤側でも組換えが生じていたため、Sox2-Creマウスを導入して検証を進めている。
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