研究課題/領域番号 |
21H00561
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
安村 直己 青山学院大学, 文学部, 教授 (30239777)
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研究分担者 |
稲垣 春樹 青山学院大学, 文学部, 准教授 (00796485)
細川 道久 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (20209240)
横山 和加子 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 名誉教授 (30265946)
岡本 真希子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (30298111)
佐々木 洋子 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (30332480)
西山 暁義 共立女子大学, 国際学部, 教授 (80348606)
小俣ラポー 日登美 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD) (90835810)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トランスカルチュレーション / 帝国 / 植民地 / キリスト教の布教 / 近世・近代転換期 |
研究実績の概要 |
新型コロナ感染拡大により、4回開催した研究会のうち1回しか対面で実施できなかった。また、所属機関の規定により、海外出張は実施できず、国内出張も大きな制約を受け、予定していた国内合同調査、合宿はキャンセルせざるをえなかった。このため未使用となった予算は次年度に繰り越すこととした。 2021年5月27日、第一回研究会を開催し、代表者の安村直己から本プロジェクトの概要が説明されたのち、各分担者から本プロジェクトでの役割構想について簡単な報告がなされた。質疑応答を通じ、トランスカルチュレーション概念についての共通認識を深める必要性が確認された。これを受け、10月23日の第二回研究会で安村がトランスカルチュレーション概念の系譜と射程に関して報告し、その後、時代的変化、地域的偏差、ジェンダーなど多様な視点からの討論が行われた。第三回は、外部報告者として原聖氏を招き、「フランス革命期翻訳政策再考ーブルターニュ地方の事例から」という題で報告していただいた。スペイン、イギリス、カナダ、ドイツ、日本といった諸事例を対象とする代表者、分担者から疑問やコメントが出され、トランスカルチュレーション事例を整理するための枠組みにまで踏み込んだ議論が交わされた。第四回では稲垣春樹が「法からみる帝国史ーイギリス、インド、ジャマイカ」という題で報告し、諸地域間の相違点と共通点を浮き彫りにすることをえた。 4回目の研究会では次年度に向けた方針について話し合い、3,4回の研究会の開催、年度末の国内合同調査、合宿の実施、2名程度の海外出張に関して合意をみた。 なお、本プログラム開始年度ではあるが、代表者、分担者は関連する研究成果を公刊しており、幸先のよいスタートをきれたといえよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染拡大により、国内での合同調査、合宿をキャンセルせざるをえず、同様に海外出張を実施できなかったことは、本プロジェクトの始動に若干の遅れをもたらした。 しかしながら、そうした障害にもかかわらず、4回の研究会を通じ、トランスカルチュレーション事例を考察するための枠組みや、個々の事例間の共通点、差異に関して共通認識を構築できたことは、次年度以降、この後れを取り戻すための十分な地ならしとなったといえよう。 また、『ラテンアメリカ文化事典』が刊行され、代表者や分担者の横山和加子が執筆した項目は、残りの分担者にとっては馴染みのうすいスペイン領アメリカ植民地をめぐるトランスカルチュレーション事例についての認識を共有することにつながった。さらに、分担者の稲垣春樹の英文著作や西山暁義の英文編著の刊行は、海外におけるトランスカルチュレーション事例に関する研究の一端に触れることを可能にしてくれた。もちろん、成果の公刊は研究者共同体に対する発信でもあり、日本西洋史学会第71回大会での小俣日登美報告は、トランスカルチュレーション研究の重要性を広くアピールするものとなった。 他方で、分担者の岡本真希子が公刊した論文は、植民地台湾における日本人官僚の官服、法服の分析を通じ、日本帝国が植民地統治を可視化するために官僚が着用する衣服の詳細までを定めた事実を詳らかにしており、トランスカルチュレーションが具体的にいかなる局面で発生していたのかに関し、他地域、他の時代をあつかう本プロジェクト参加者に重要な示唆を与えるものであった。 こうして、新型コロナ感染拡大が様々な制約を課す状況下であっても、本プロジェクト参加者の間では活発な情報交換が行われ、トランスカルチュレーション事例の共同研究は実質的に進展し、本プロジェクトの最終的な目標達成に向け、適切な形で初年度を終えることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度に実施できなかった国内での合同調査、合宿、および海外出張を通じ、一次史料の収集や最新の研究動向の把握にも努めていく。 2022年度は、長崎とその周辺、あるいは京都、大阪近郊で、近世日本、東アジアとヨーロッパ諸国の接触がもたらしたトランスカルチュレーション事例の合同調査を実施する予定である。日本における諸事例を現地で調査することは、かならずしも日本を研究対象としてこなかった参加者にとり、比較研究への視野を広げることに資すると考えるからである。海外出張については2名程度に対して経費を負担し、ここ2年間、停滞を余儀なくされてきた海外研究者との交流の再活性化を図る。 研究会については3,4回の開催を目指す。報告者としては内部から細川道久、小俣日登美、西山暁義を立て、それぞれカナダにおける入植者と先住民の関係、近世におけるキリスト教宣教師を通じてのヨーロッパ知識人による日本イメージの形成、帝政期ドイツにおける児童文学と植民地主義の関係について報告してもらう。さらに、外部報告者を立てる予定だが、現時点では候補者を絞り切れていない。また、開催形態については状況に応じ、対面、オンライン、ハイブリッドのいずれかを柔軟に選択する予定である。 合同調査、合宿は次年度末に実施する公算が高いが、その機会を利用し、本プロジェクトの最終成果報告のありようについての話し合いも始める予定である。代表者、分担者それぞれによる関連するテーマについての成果公刊については大いに奨励する。
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