研究課題/領域番号 |
21H00664
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
嵩 さやか 東北大学, 法学研究科, 教授 (00302646)
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研究分担者 |
飯島 淳子 東北大学, 法学研究科, 教授 (00372285)
山城 一真 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00453986)
倉田 賀世 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (10431298)
石綿 はる美 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10547821)
橋爪 幸代 日本大学, 法学部, 教授 (30407340)
中野 妙子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50313060)
冷水 登紀代 甲南大学, 全学共通教育センター, 教授 (50388881)
久保野 恵美子 東北大学, 法学研究科, 教授 (70261948)
今津 綾子 東北大学, 法学研究科, 准教授 (80708206)
大濱 しのぶ 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (90194266)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会保障 / 扶養義務 |
研究実績の概要 |
2021年度(繰越しも含めると2022年度)においては、社会保障法における扶養義務又は家族の位置づけを分析するための研究会を立ち上げ、定期的に意見交換を行った。その中では特に、私的扶養が制度に組み込まれている生活保護、社会福祉、児童扶養手当に検討対象を絞り、扶養義務者がどのような役割を担っているのか、社会保障制度が家族関係にいかなる影響を与えているのか、などを共通の視点として設定し、制度横断的な分析を開始した。 また、近年関心が高まっている養育費の履行確保については、養育費の取決めの実態や養育費制度の近時の動向、裁判例を調査するとともに、養育費支払義務者が自営業者の場合には、どのように養育費算定の基礎となる収入を把握・計算するのかという実務的に重要な課題を取り上げ、裁判官・弁護士等へのインタビューをも通じて、問題点・今後のありうる方策を検討した。さらに、私的扶養について、金銭的なサポートだけでなく、非金銭的なサポートとして重要な児童の養育について、問題が生じた場合の社会福祉における相談支援の展開や虐待児童への保護に関する現状の法制度を把握した。他方で、家族による事実上の保護機能が脆弱化している状況を念頭に、権利擁護や地域における相談支援の仕組みの現状と課題を検討することで、家族の機能と国の役割とのすみ分けに係る全体的な視点を共有した。 さらに、比較法的視点からの研究も遂行した。とりわけ、フランス養育費制度勉強会を立ち上げ、定期的にフランスの養育費制度及び関連する社会保障制度、民事執行手続き等についての現状把握と認識の共有を図ることとした。また、フランスの社会保障制度を調査するため、研究協力者に現地調査を依頼し、フランスの社会保障制度が抱える現在の課題等についての知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度(繰越しも含めると2022年度)は、本研究計画の初年度として、共同研究の仕組みを立ち上げるとともに、研究者間の連携体制を構築した。本研究計画は社会保障法を核にしつつ、民法、行政法、民事訴訟法等の関係領域との分野横断的な共同研究であるが、主に養育費制度を対象として分野横断的な共同研究のためのネットワークを形成し、それにより研究成果も順調に得ることができた。 また、中核となる社会保障法に関する共同研究については共同研究のチームを組織し、2023年度の学会報告を目標に研究を推進している。 こうした共同研究は、各研究者の個別の研究をベースとして、それを共有し増幅させることで実施されるが、研究代表者・研究分担者ともに、研究協力者の助力を得ながら、個々の研究を着実に積み上げている。したがって、本研究計画は、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、第1に2023年5月の日本社会保障法学会でのミニシンポジウムでの発表に向け、社会保障法と扶養義務との関係についての研究を進展させる。とりわけ、生活保護、社会福祉、児童扶養手当について、実務についての実態調査も踏まえながら、現状の法制度の趣旨と課題を明らかにし、社会保障制度において国家が家族にいかなる介入をすることができるか、すべきであるのかを探求する。 第2には、民法や民事執行法などを専門とする研究分担者とより緊密に連携を図り、扶養義務や養育費に関する裁判例・立法の動向をさらに分析し、養育費の履行確保措置など、立法措置についても具体的に検討を行う。その際には、勉強会の実施、文献調査のほか、国内外でのインタビュー調査等も実施することで、諸外国の法制度の動向についての検討も深める。 第3には、より大きな枠組みの議論として、本研究グループ以外の研究者の協力も得ながら、社会保障制度を対象に、国家による家族への介入や、家族に関わる制度の構築についての基本理念を探求する。特に、虐待などの事象を念頭に発展してきた「家族のなかの脆弱な個人」という視点を社会保障制度や扶養義務制度において展開する可能性について、共同研究を通じて検討を深める。
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