研究課題/領域番号 |
21H00702
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
岡田 羊祐 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (30224033)
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研究分担者 |
川濱 昇 京都大学, 公共政策連携研究部, 教授 (60204749)
松島 法明 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (80334879)
林 秀弥 名古屋大学, アジア共創教育研究機構(法学), 教授 (30364037)
西脇 雅人 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (80599259)
佐藤 英司 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (90707233)
早川 雄一郎 立教大学, 法学部, 准教授 (80737221)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 競争政策 / デジタル経済 / 独占禁止法 / サプライチェーン |
研究実績の概要 |
2021年度はコロナ禍が続いたために対面の研究会は行わず、オンラインによる研究会・意見交換を中心に行った。グローバルなデジタル経済におけるサプライチェーンに対する規制目的や違法性の判断基準を明確にすることは、合理的・整合的な競争政策を推進するために不可欠である。そこで、デジタル経済の文脈のなかで市場支配力の行使と厚生基準の関係を法的・経済学的に検討した。 特にデジタル経済における競争政策の動向として注目されるのは、事前規制と事後規制を事業者の自主規制と融合させる共同規制の導入が進みつつあることである。共同規制のメリットは、競争法による重い手続き(市場画定、反競争行為の認定、排除措置命令)に依らず、迅速かつ柔軟に事業者との協力関係を維持しつつ実効的な規制を実現できる点にある。 しかし、本研究プロジェクトの検討を通じて、共同規制が競争政策と整合的に機能するためには、なお多くの課題があることが明らかとなった。例えば、規制対象を一部事業者に限定する適切な仕組みを設けること、事前規制に係る行動規範を的確かつ柔軟に設けること、違法性の判断は事前的な衡平性の原則に従うべきこと、デジタル経済の技術変化を考慮した動学的資源配分に配慮するべきことなどである。 これらの検討をベースとして、さらに最新動向に関わる文献調査を行い、デジタル経済における独禁法事件の事例の検証を行った。特に、オンライン・モール、アプリストア、クラウドサービスにおける様々な紛争事例に関する情報収集を行い、メンバー間で事例研究や文献情報の共有や意見交換を行った。さらに、デジタルプラットフォームに対する規制を所管する経済産業省、公正取引委員会の担当者と意見交換を行い規制政策の最新動向の情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デジタル経済における競争当局の規制は、事前規制を行う多くの個別規制法等との相互調整と国際的な収斂を如何に図るべきかに注目が集まっているところである。イノベーションを巡る技術変化が速いデジタル分野において、競争法の適格な運用を探るためには、着実に最新の規制動向や事例の検討を進めることが不可欠である。この論点に関連する分野の研究者や実務家を招いた意見交換や研究会を定期的に開催することによって、これら論点について理解を深めることができた。以上の理由から、研究計画はおおむね順調に進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
デジタル経済における市場支配力や厚生基準の適用ルールにおける整合性が十分でない現状のもとで、デジタルプラットフォームを軸とするサプライチェーンの流動化が進み、競争政策における理論と実務のギャップは一層拡大しつつある。この空隙を埋めるためには、競争政策における事後規制と事前規制の最適バランスを適切に再定義する必要がある。 そこで、デジタル経済の事前規制に関わる関連諸法の研究者との交流をさらに広げつつ、本研究課題の検討を進めていく。特に、イノベーション政策、技術者等に対する労働政策、知的財産政策、個人情報保護政策などに関連する研究者と協力しつつ、規制政策と競争政策の関係についてさらに理解を深めるために、引き続き幅広い分野の研究者をゲストスピーカーとして招いたセミナーを定期的に実施する。 また、法学系の研究者との研究交流の機会を広げるため、池田千鶴教授(神戸大学)が代表を務める科研基盤研究(A)「プラットフォームの影響力拡大に伴う多元的リスクに対応した次世代規制の包括デザイン」(令和4年度~令和8年度)との連携を開始する予定である。
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