研究課題/領域番号 |
21H00761
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
石田 惣平 立教大学, 経済学部, 准教授 (20780315)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 相談役・顧問 / 決定要因 / 企業業績 / 退任した経営者 |
研究実績の概要 |
相談役・顧問とは、社長等であった者がその地位を退いたあと、現役の経営陣への助言や対外活動の支援を行う目的で設けられた日本企業特有の役職である。他方、近年では、相談役・顧問が現役の経営陣に対して不当な圧力を及ぼしていることが指摘されており、その削減・廃止が迫られている。このような背景から、本研究は、相談役・顧問の役割や問題点を明らかにする。これまで情報開示規定が存在しなかったため、相談役・顧問の役割や問題点の解明が行われてこなかった。しかし、近年の社会的な要請により、2018年1月から「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」においてその情報開示が始まっている。本研究の目的はこの開示制度を活用して、相談役・顧問に関するデータベースを構築し、その役割や問題点を実証的に明らかにすることにある。 2021年度はまず、相談役・顧問制度に関するデータベースを構築した。具体的には、当該データを「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」から収集している。なお、2018年分と2019年分のデータ収集はすでに終えているため、2020年分の収集を行った。続いて、相談役・顧問制度を導入している企業の特性を明らかにすることを通じて、日本企業がどのような意図で相談役・顧問制度を導入しているのかを検証している。検証の結果、現役の経営陣への助言や対外活動の必要性が高い企業には、相談役・顧問制度は導入されていない一方で、経営者の力が弱い企業や取締役会の人数が多い企業、また規模が大きく設立年数が古いような伝統的な日本企業ほど相談役・顧問を採用している可能性が高いことが明らかとなっている。加えて、相談役・顧問を採用している企業ほど将来の企業業績が低いことが確認されている。これらの研究の成果は、今後、国内外の学会で報告し、得られたコメントをもとに改訂した後、査読付学術誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」から相談役・顧問制度に関するデータベースを構築することできた。また、日本企業がどのような意図で相談役・顧問制度を導入し、その結果、事後的な企業業績がどのようになるのかについても検証することができた。こうした点から、2021年度の進捗状況を「おおむね順調に進捗している」としている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度については2021年度から継続している研究を行う。第1に、相談役・顧問制度に関するデータベースを構築する。具体的には、当該データを「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」から手収集する。なお、2020年分までのデータ収集はすでに終えているため、2021年分の収集を行う。第2に、相談役・顧問制度の実態の整理と当該制度を導入している企業の特性に関する研究である。2021年度にすでに分析を終えているため、2022年度では検証結果を論文としてまとめて、査読付学術誌に投稿する予定である。第3に、相談役・顧問のポストを獲得するために退任間近の経営者が利益増加型の利益調整を行うのかの研究である。こちらは2021年度にすでに分析を終え、論文としてまとめているため、2022年度では査読付学術誌に投稿する予定である。次に、2022年より新たに着手する研究を行う。具体的には、事業売却に関する研究を行う。これまでの研究から、相談役・顧問はアドバイスの必要性から導入されているのではなく、企業の慣行として導入されていることが確認されている。この点を踏まえて、相談役・顧問が存在する場合に、不採算事業の売却が適切に行われるか否かを検証する。
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