研究課題/領域番号 |
21H00809
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
和田 浩二 琉球大学, 農学部, 教授 (50201257)
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研究分担者 |
荒川 雅志 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (70423738)
中山 素一 九州産業大学, 生命科学部, 教授 (90626095)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 香り / ヒハツモドキ / 香辛料 / GC-MS / ストレス / 抗菌性 / ウェルネス |
研究実績の概要 |
本研究では、沖縄在来の亜熱帯香辛料であるヒハツモドキ(Piper retrofractum Vhal)に着目し、ヒハツモドキの多様な加工品を用い、それらの官能的および化学的な香り特性、香り成分による抗ストレス作用や抗菌作用といった香りの多面的な機能を解析する。さらに、香りを用いた重層的なヘルスツーリズムへの活用とレシピ開発を行う。本年度は、ヒハツモドキ果実の乾燥や焙煎の方法および条件が物理特性や香気特性に及ぼす影響を中心に解析・評価した。 (1)ヒハツモドキ果実の乾燥および焙煎に伴う物理特性の変化 微生物の生育が抑制される水分活性を満たすには、天日では12 時間以上、乾熱器では50℃で24時間以上、70℃で4時間以上、90℃で4時間以上の乾燥が必要であった。また焙煎試料では180℃、30分で最も重量が減少し、さらに180℃、10分以上焙煎では長径および短径が有意に増加したが、これは急速な温度上昇に伴い果実内の水分が急激に水蒸気化し、子房室内がはじけたためと推定された。 (2)ヒハツモドキ果実の乾燥および焙煎に伴う香気特性の変化 各加工における香気成分の官能基別組成では生果実(コントロール)と比較して、90℃以上の加熱でアルデヒド、ケトンおよびエステルが増加傾向を示し、焙煎(180℃)によりメイラード反応やカラメル化反応による生成物が確認された。一方、各加工試料で含量が高かった10成分を用いて主成分分析を行った結果、コントロールおよび天日乾燥(6時間)はLinalool(flower-like)やMethanol(pungent)、焙煎(180℃)はMethyl acetate(fruity)、蒸し乾燥はβ-Caryophyllene(woody)と相関が認められた。さらにクラスター分析により、コントロールおよび各加工試料の香気特性を8グループ(類似度75%)に分類することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は研究期間を4年とし、香り特性の評価とフードミクス解析(研究課題1)、抗ストレス作用と作用成分の解析(研究課題2)、飲料における抗菌作用の解析と検証(研究課題3)、ウェルネス資源活用に向けたモデル開発(研究課題4)の4つの課題から構成され、研究課題1の成果を研究課題2と研究課題3に、それら3つの研究課題の成果を研究課題4に連携させて研究を実施する。 本年度は、計画として香り特性の評価とフードミクス解析(研究課題1)を中心に研究を実施した。具体的には、収穫期、成熟度の異なるヒハツモドキ生果実および乾燥、蒸し、焙煎処理した加工品から抽出した香気濃縮物について、GCおよびGC-MS分析により構成成分の定性・定量分析を行うことができた。また、香りの構成成分のヒトの嗅覚への寄与を評価するため、におい嗅ぎ-GCにより構成成分の質と強度を評価する手法について設定し、フードミクス解析にも着手することができた。さらに、研究課題3では次年度からの抗菌作用の検証のための評価系を検討し、研究課題4についても、ヒハツモドキの主要産地である沖縄県八重山地域をフィールドとして、ウェルネス資源としての活用のためのエビデンス調査に着手できた。 以上のことから。研究はおおむね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
香り特性の評価とフードミクス解析(研究課題1)では、ヒハツモドキ生果実および乾燥、焙煎処理した加工品から抽出した香気濃縮物について、香りの構成成分のヒトの嗅覚への寄与を評価するために、におい嗅ぎ-GCにより構成成分の質と強度を解析する。また、官能評価のデータも含めてメタボロミクス解析の応用であるフードミクス解析を試みる。抗ストレス作用と作用成分の解析(研究課題2)では、新型コロナウイルス感染症に伴いヒトによる個室での実験が困難である場合を想定して当初計画していたストレス負荷マウスを用いた評価系を検討する。また、飲料における抗菌作用の解析と検証(研究課題3)では、抗菌作用の検証のために、Alicyclobacillus 属細菌においてグアイヤコール臭を産生し、飲料の商品価値を著しく低下させるA. acidoterrestisを用いた評価系を確立し、ヒハツモドキからの香気濃縮物の抗菌作用の解析と検証に着手する。なお、ウェルネス資源活用に向けたモデル開発(研究課題4)についても、先行してヒハツモドキの主要産地である沖縄県八重山地域をフィールドとして、ウェルネス資源としての活用のためのエビデンス調査を継続する。
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