研究課題/領域番号 |
21H00819
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉田 浩崇 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (10633935)
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研究分担者 |
白石 崇人 広島文教大学, 教育学部, 准教授 (00512568)
岡花 祈一郎 琉球大学, 教育学部, 准教授 (50512555)
浅川 淳司 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (00710906)
熊井 将太 山口大学, 教育学部, 准教授 (30634381)
大下 卓司 神戸松蔭女子学院大学, 教育学部, 准教授 (80713578)
間篠 剛留 日本大学, 文理学部, 准教授 (90756595)
松田 充 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 助教 (80845991)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 教育学の自律性 / 中等教員養成改革 / 心理学史 / 師範学校・大学 |
研究実績の概要 |
本研究の核心となる問いは、「20世紀初頭の教員養成と教師の専門職化の過程でどのように教育に関わる科学(心理学や生理学、遺伝学等)が展開され、教育学とその周辺領域が再編成されたのか」である。核心となる問いに答えるべく、本研究では、①実証的な科学が台頭し、教育政策に影響を及ぼした20世紀初頭に焦点を絞り、②生徒の選抜や個性に応じた教育、中等学校教員養成といった実際的な教育問題に応答する中で、教育学関連領域がどのように再編成されたのかを③教員養成や教師の専門職化をめぐる議論に注目することで明らかにする。 研究は、20世紀初頭における実際の教育問題、高等教育政策、教員養成制度の変遷を俯瞰的に検討するグループと、各国の教育学およびその周辺領域の再編成過程を調査・探究するグループに大きく分け、年度ごとに研究を進める。 本年度は共同研究の土台をつくるべく、2021年9月21日(火)に第一回(オンライン)、2022年3月4日(金)に第二回(広島市およびオンライン)、2022年3月31日に第三回(オンライン)の研究会を実施した。 研究成果としては、「教育において「エビデンスに基づく(エビデンス・ベース)」とはどういうことか?」(杉田浩崇、『教育研修』9月号、2021年)や「エビデンスオンラインセミナー」講師(杉田浩崇・熊井将太、エビデンスに基づく教育研究会、2021年12月20日)で広く教育関係者に研究成果を発信するとともに、杉田が教育哲学会第64回大会課題研究「「データ駆動型社会」における教育哲学の課題:これからの教育にとって「データ」「情報」「知識」はどのような意味をもつのか」に登壇した。また、熊井は、中国四国教育学会第73回大会(2021年11月29日)において「『教育の心理学化』に関する学説史的研究」と題した発表を行い、近代心理学および近代教育学の成立期における両者の関係を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、次年度以降の共同研究に向けて、互いの研究関心を交流し、研究の土台をつくることが主な目的であった、3回開催した研究会では、心理学における知能検査の歴史的変遷、高等教育の展開およびその中での教員養成機関(師範学校および師範大学)の位置づけの変化、ドイツ教授学におけるヘルバルト派の心理学受容、イギリス心理学の教育実践への関与に関する報告が行われた。研究会の報告をふまえて、中等教員養成改革における教育学の自律化過程を国際比較することの意義を共有し、次年度以降の研究視点とすることが決まった。あわせて、次々年度の研究視点として、知能検査の変遷や心理学の台頭を中心に検討することも決まった。次年度以降の国際比較共同研究の視点が定まって、本格的な研究に着手できる準備が整った点で、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに共有した土台をもとに、各国の教育学とその周辺領域の境界画定過程を調査する。本年度の調査の主な対象は、19世紀末から20世紀初頭にかけての中等教員養成改革において、教育学が自らの学問領域を基盤づけ、自律化していった過程である。この時代は、初等教育学校に続いて中等教育学校の普及が進むことで、中等教育を担う教師の養成が前景化した。中等教育学校が一部のエリートを対象にした学校からコモンスクールへと変容する中で、その教育を担う教員の専門性を従来のリベラル・アーツの習得によって担保することが難しくなった。中等学校教員の受容拡大も伴って、師範学校の高等教育化と教育学の理論化が求められた。今後はこうした中等教員養成改革に伴う教育学の自律化を、高等教育の制度的変遷に焦点を当てるだけでなく、学力の多様化や貧困等の教育の社会問題化に伴う実証科学の台頭や学校教員の専門職化への希求なども視野に入れながら検討する。 共同的な研究を進めるべく定期的に研究会を開催するとともに、日本教育学会のラウンドテーブルを企画し、研究成果を広く交流する。
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