研究課題/領域番号 |
21H01953
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
亀尾 肇 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50597218)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 無機化学 / 錯体化学 / 触媒反応 / 結合活性化 |
研究実績の概要 |
強固なケイ素-酸素、ケイ素-フッ素結合の変換を基軸とする効率的分子変換反応の開発は、ケイ素産業を発展させる上で重要な課題である。申請者は、σ 電子受容性 (Z 型) 配位子の特性に注目し、強固な極性結合を切断する求核的な活性化法を開発し、ケイ素-酸素、ケイ素-フッ素結合の触媒的な変換を世界に先駆けて実現してきた。本研究課題では、それらの成果を足掛かりとして、ケイ素化合物の効率的な分子変換反応を実現するための学術的知的基盤を構築することを目的とする。さらには、その知見に基づいて、ケイ素材料の革新的な合成やリサイクルを実現するための基礎技術の創出に取り組む。 これまでに、パラジウム触媒とルイス酸との協同効果により、アルコキシシランの触媒的な変換が実現されることを見出していた。そこで、当該年度では、種々の手法を用いて、その変換反応におけるルイス酸の役割を明らかにすることに取り組んだ。化学量論反応を通した反応追跡の結果、アルコキシシランがパラジウム錯体により求核的に活性化されたのち、ルイス酸はそのケイ素-酸素結合を切断していることがわかった。その知見を基に、切断反応に最適なルイス酸を見出し、アルコキシシラン類の触媒的なアリール化が効率的に実現される条件を見出した。さらに、本触媒反応では、多様な官能基を有するアリール基も導入可能であることを明らかにした。 当該年度で得られた知見は、ケイ素-酸素結合のみならず、強固な極性結合の触媒的な変換を実現するために重要なものになる。この知見を基に、次年度ではシロキサンやクロロシランなどのケイ素化合物の効率的な分子変換反応の開発を検討してゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強固な高極性結合群の触媒的変換を実現する上での学術的知的基盤を得るために、ケイ素-酸素結合の触媒的変換を中心に検討した。これまでに、リチウム塩またはホウ素試薬などのルイス酸の存在下で、パラジウム錯体触媒を用いることで、アルコキシシラン類の根岸型のカップリング反応が実現されることを見出していた。そこで、当該年度では、その変換反応におけるルイス酸の役割を明らかにするために、化学量論反応を通して反応機構を詳細に調査した。その結果、パラジウム錯体により求核的に活性化されたアルコキシシランのケイ素-酸素結合がルイス酸との反応で、強固なケイ素-酸素結合が切断されることを見出した。さらに、ルイス酸を詳細に検討することで、ヨウ化マグネシウムが最も効率的にケイ素-酸素結合の切断を実現することを見出した。その知見を基に、ヨウ化マグネシウムをルイス酸として採用したところ、効果的なカップリング反応が実現されることを見出した。また、ルイス酸の当量や種類を調製することで、ジメトキシシランのモノアリール化とビスアリール化反応を制御できることも見出した。本触媒反応では、メトキシ、フッ素、塩素、チオメチルなどの官能基を有するアリール基も導入可能であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
アルコキシシランの変換を通して、ケイ素-酸素結合の変換に適する反応条件が明らかになってきた。特に、化学量論反応を通して、強固なケイ素-酸素結合の切断において、ヨウ化マグネシウムとパラジウム触媒の組み合わせにおいて切断反応が効果的に実現できることを見出すことができた。一方、ケイ素-酸素結合は、ケイ素上置換基の影響を強く受ける。特に、シロキサン結合 (Si-O-Si) 内のケイ素-酸素結合は強固であり、その切断を達成できれば、地球の地殻に多く存在するケイ素化合物を効率的に変換する技術、ケイ素材料のリサイクルを実現する技術を開発していく上で、重要な知見になるものと考えられる。そこで、シロキサン結合 (Si-O-Si) 内のケイ素-酸素結合を触媒的に変換できるように、詳細な反応設計を実施してゆく。また、求核的な活性化を鍵とする強固な結合の切断法を、ハロシランやハロゲルマン、アルコキシゲルマンに適用して、それらの分子変換反応の開発を検討する。
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