研究課題/領域番号 |
21H02267
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
斎藤 大樹 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授(特定教員) (90396309)
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研究分担者 |
三井 一鬼 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (20844773)
後藤 理恵 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授 (70399997)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 始原生殖細胞 / 不妊化 / スマ / 生殖細胞質 |
研究実績の概要 |
本年度は、紫外線照射によりスマの生殖細胞を減少させることができるか否かを確かめるため、紫外線照射装置を作成し、様々な強度で受精卵への紫外線照射を行った。紫外線処理胚および無処理コントロール胚は、処理後直ちにGFP-buc mRNAの顕微注入による生殖質の可視化、あるいはGFP-nos3 3'UTR mRNAの顕微注入による始原生殖細胞の可視化をおこなった。その後、GFPにより可視化された生殖質の動態および始原生殖細胞を蛍光顕微鏡により観察した。1細胞期の胚盤へ紫外線を照射したところ、照射強度が強くなるにしたがい、生殖質の断片化が観察された。また、紫外線照射強度が強くなるに従い、始原生殖細胞の数が減少することが明らかとなった。これらのことは、分離浮性卵のスマ卵においても、紫外線照射による不妊化あるいは低任化が可能であることを示している。しかしながら、紫外線照射強度が高まるにつれ、発生異常を呈する個体が増加したことから、やはり当初の計画通り、紫外線から体細胞核を保護する仕組みを構築する必要があることが示された。また、自然の光環境とスマの産卵行動の関連を調べるため、生簀で飼育しているスマの産卵時刻を詳細に調べたところ、スマは日没直前に産卵行動を行うことが明らかとなった。さらに、培養温度を細かく制御し、様々な水温条件下でスマの胚発生速度を調べることにより、異なる温度条件下での発生速度等を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、1)海洋でのスマ胚発生の解析、2)気象装置を用いてのスマ胚の解析、および3)生殖質および始原生殖細胞の発生解析を達成することができた。得られた結果は、分離浮性卵のスマ卵においても、紫外線照射による不妊化あるいは低任化が可能であることを明らかにし、次年度以降の研究計画が妥当であることが示された。このことから、研究の進捗状況はおおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、スマ受精卵に対する紫外線照射実験を継続し、効果的に生殖質を破壊するための紫外線照射条件を確立する。得られた処理胚について、詳細な組織学的観察による生殖細胞質の観察を行うことにより、紫外線の効果を定量化する。また、体細胞核を保護しつつ生殖細胞質を破壊することができる装置の開発をすすめる。新装置を用いて作出した照射胚の発生率および始原生殖細胞の有無と局在を観察し、紫外線照射条件を最適化する。同時に、大量に胚を処理するため、胚を整列して一括で処理する方法の検討も行う。不妊化、低妊化個体の作出条件が確立されれば、処理個体の遺伝子発現プロファイル等を明らかにするとともに、ゲノムDNAの健全性の検討等も行う。
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