研究課題/領域番号 |
21H02360
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
度会 雅久 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (40312441)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞内寄生菌 / 自然宿主 / 共生 / マクロファージ / カイコ / 野兎病 |
研究実績の概要 |
細胞内寄生菌は増殖するステージと共生(休眠)するステージがあることが知られている。共生ステージになると保菌宿主は無症候性キャリアとなり、新たな感染源となると同時に再燃の危険性がある。宿主内における増殖と共生の双方に関与する因子の同定は、宿主の感受性の差異を解明する手がかりとなることが期待される。本研究では我々が構築した自然宿主感染モデルを用いて、共生と感染の間で機能する新規因子群を探索する。細胞内寄生菌の代表として野兎病菌およびノビシダ菌を用い、終宿主感染モデルとしてのマクロファージと自然宿主モデルとしてのカイコ内の動態について比較解析を検討した。 F. novicida(ノビシダ菌)を用いて、トランスポゾンを用いたランダム挿入変異体ライブラリーを作成し、カイコにおける感染性に変化が生じた株の分離を試みた。その結果、mltA遺伝子がノビシダ菌のカイコへの感染に関与することが認められた。mltA遺伝子は膜結合溶解性ムレイントランスグリコシラーゼA(MltA)をコードしていることが知られている。カイコにmltA欠損株を感染させたところ、親株に比べ、カイコ体内における菌の増殖が抑制され、カイコの生存期間の延長が認められた。さらに、mltA欠損株は、親株と比較して、カイコにおいて抗菌ペプチドのより高い発現を誘導した。これらの結果は、MltAが免疫抑制関連のメカニズムを介してカイコ体内におけるノビシダ菌の増殖に関与していることを示唆している。mltA欠損株の細胞内増殖能は、ヒト由来単球系細胞株のTHP-1細胞においても減少することが認められた。以上の結果は、ヒトの病原性に対するMltAの関与と、フランシセラ感染を解析するためのノビシダ菌-カイコ感染モデルの有用性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな節足動物モデルとしてカイコ(Bombyx mori)の有用性に着目し、野兎病菌の自然宿主モデルの解析を行っている。本年度はトランスポゾンを用いたランダム挿入変異法により、カイコ内増殖能が低下した変異株の作出を行い、原因遺伝子の同定とその機能解析を実施した。その結果、ノビシダ菌の感染時に認められる宿主の免疫抑制作用に本研究で見出されたMltが関与することが示唆された。今後これらの菌株の性状解析をさらに進めるとともにマクロファージ内増殖について検討を行う。宿主への共生に関与する因子(共生因子)の機能解明がさらに進むものと期待される。また、ノビシダ菌(Fransicella tularensis subsp. novicida)は野兎病菌(Fransicella tularensis subsp.holarctica)の類縁菌である。両菌の細胞内増殖には共通性が認められるが、カイコ内増殖は異なることが示唆されているため、比較検討することにより共生に関与する因子の同定が可能になると考えられる。概ね計画どおり進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
概ね計画どおり進捗しているため、計画どおり研究を進める。細胞内寄生菌で環境中に広く分布する細菌の代表としてレジオネラおよび野兎病菌、自然宿主モデルとしてゾウリムシおよびカイコを用いて解析する。ゾウリムシおよびカイコとカイコ由来細胞株内に共生できない変異株を作製し、共生関連因子を分離・同定する。その因子の機能、特に宿主の細胞内輸送や免疫調節機能に注目して遺伝学的および分子生物学的手法を用いて解析する。細胞内増殖に関与する既知の病原因子である、IV型およびVI型分泌機構とそのエフェクター因子の発現と機能について自然宿主モデルを用いて解析し、その役割を検討する。さらに新規菌側および宿主側因子の同定と機能解析を行い、共生機構に関与する因子が感染制御に応用可能かどうか明らかにする。具体的には以下の項目を行う。 変異株作製による共生に関与する因子の探索:自然宿主への共生に必要な菌側因子を検索するために、トランスポゾンを用いたランダム挿入変異法により、共生しない変異株の作出を引き続き行う。これまでに分離した変異株について、機能解析を行うことにより、病原因子の新たな機能を提示できるものと考えられる。 宿主側因子の探索:CRISPR システムを用いて培養細胞に対してランダムに遺伝子破壊を行う。菌を感染させ、感染による細胞死が起こらない細胞を選別する。これまでに作出した変異細胞について、感染への影響を解析する。これらの情報をもとに自然宿主の標的遺伝子をsiRNAでノックダウンし、感染への影響を解析する。
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