研究課題/領域番号 |
21H02592
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
日置 寛之 順天堂大学, 医学部, 教授 (00402850)
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研究分担者 |
田中 琢真 滋賀大学, データサイエンス学部, 准教授 (40526224)
古田 貴寛 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (60314184)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 神経回路 / シナプス結合則 / 抑制性神経細胞 / 大脳新皮質 / マウス |
研究実績の概要 |
本研究課題では、高次機能発現や各種神経・精神疾患と深い関連があるGABA細胞に注目し、普遍的な抑制性神経回路と特異的な抑制性神経回路を抽出し、ネットワーク構造という観点から大脳新皮質の均一性と不均一性を統べる新規コンセプトを確立することを目的としている。令和3年度は以下の課題に取り組んだ。 (1) S1 SOM発現細胞への各種シナプス入力解析 SOM発現細胞に対する各種シナプス入力を明らかにし、S1におけるGABA細胞ネットワーク構造の全貌をシナプスレベルの解像度で同定する解析法のパイプラインを策定した。(a) Cre recombinaseを発現する遺伝子改変マウスに高発現型アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを注入し、緑色蛍光タンパク質(GFP)でSOM発現細胞を隅々まで標識する。 (b) 灌流固定した後に、厚さ1 mm程度のスライス標本を作製し、「ScaleSF法」によって透明化処理を行う。そして、光学顕微鏡(LM)イメージングによって、SOM発現細胞の全体像を捉える。(c) スライス標本から厚さ20-40 umの薄切切片を作製した後に蛍光免疫染色を行って、共焦点レーザー顕微鏡観察によってシナプス結合部位とシナプス結合数を定量的に解析する。解析データを順調に取得しており、これまでに想定されていなかったシナプス入力パターンがあることを見出しており、より詳細に解析を進める予定である。 (2) M1 PV発現細胞への各種シナプス入力解析 皮質からの興奮性入力、視床からの興奮性入力、皮質からの抑制性入力、さらに抑制性入力を細胞種別で解析した。S1とM1におけるシナプス入力パターンの相同性と相違性について新たな所見を見出した。この結果をもとに、他の皮質領野ではどうなっているのかについても検討を開始した。なお、取得したデータを田中(研究分担者)と共有し、数理モデル構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に大きな問題も生じず、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
大脳新皮質は比較的均一なカラム構造から構成され、そのカラム構造は皮質全体に一貫した基本単位であると考えられてきた。しかし一方で、各皮質領野の層構造や各種神経細胞の分布など形態学的特性は異なり、大脳新皮質の構造は不均一であるようにも見える。大脳新皮質の構造には真にグランドデザインとでもいうべき構造原理が存在するのだろうか?この問いに答えるべく、本研究課題では、皮質GABA細胞が構成する神経回路構造を対象に、① 皮質全体に共通する普遍的な抑制性神経回路と ② 皮質領野毎に異なる特異的な抑制性神経回路を解明する。令和4年度は、以下の研究項目を実施する。 (1) S1 SOM発現細胞への各種シナプス入力解析:令和3年度に策定したパイプラインに従って解析を進める。S1の第5層には3つのサブタイプがあることが知られており、シナプス入力パターンに相違がないかを慎重に検討する。また、令和3年度に見出した特徴的なシナプス入力パターンについては、形態学的解析だけでなく生理学的解析や生化学的解析など、視野を広げて包括的な解析を試みる。 (2) M1 SOM発現細胞への各種シナプス入力解析:(1) と同様の手法を用いて、M1においても解析を行う。SOM発現細胞の樹状突起および軸索の再構築を行い、形態学的特徴によってサブタイプに分ける必要があるかどうかについて詳細に解析する。 (3) M1 PV発現細胞への各種シナプス入力解析:他の皮質領野での検討や、古田(研究分担者)と共にEMイメージングを行ってシナプス結合の確認およびシナプス構造の解析を進める。
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