研究課題
NAFLD/NASHは肥満に伴う生活習慣病の肝臓病変であるが、いまだ有効な治療法は確立されていない。また、本疾患の病態形成において、肝細胞外ATP、アデノシン(ADO)動態変化の意義が示唆されているが、病態進行度とATP、ADO動態との相関やその病態生理学的意義に関する詳細は未だ明らかになっていない。本研究では、肝細胞特異的にATP、ADO動態を可視化するセンサーゼブラフィッシュ(GRABATP、GRABADOフィッシュ)を樹立し、様々な脂肪肝モデルを作製・解析することで、本疾患における肝ATP、ADO動態の病態生理学的意義を解明する計画である。さらにこれらのセンサーゼブラフィッシュを用いて、肝ATP、ADO動態を指標とした治療薬候補のin vivoスクリーニングを行い、新たな治療基盤の開発へとつなげたいと考えている。本年度は作製したGRABセンサーゼブラフィッシュを用いて、アルコール性肝障害モデルならびに食餌性脂肪肝モデルを作製の上、肝臓におけるATP、ADO動態変化の解析をおこなった。その結果、アルコール性肝障害モデル、高脂肪食負荷による脂肪肝モデルにおいてGRABセンサーゼブラフィッシュでの明らかな肝臓のGFP輝度の増大を認め、これらの肝障害の病態と肝細胞外ATP/ADO動態の相関を明らかにすることができた。現在、肝細胞外ATP/ADO含量が増加した際(GFP輝度が増大した際)の肝障害の病態進行度に関し、肝臓腫大の有無、肝臓のトリグリセライド含量や炎症性サイトカイン含量測定、免疫組織学的解析などにて病態評価を進めている。
2: おおむね順調に進展している
肝細胞外ATP、ADO動態を可視化するGRABセンサーゼブラフィッシュ(GRABATP、GRABADOフィッシュ)の樹立に成功し、アルコール性肝障害ならびに食事性脂肪肝モデルにおいて、肝細胞外ATP、ADO含量と相関する肝臓のGFP輝度の増大を認めた。食餌性脂肪肝モデルに関しては、肝臓腫大ならびに肝臓のトリグリセライド含量の増加を認め、免疫組織学的手法を用いた肝臓のHE染色、Oil red O染色、Masson trichrome染色(線維化の指標)などの解析にて、脂肪肝を発症していることが証明された。以上より本年度は、肝障害進行度と肝細胞外ATP/ADO動態の相関をin vivoゼブラフィッシュを用いて明らかにすることができ、次年度の本研究課題遂行に向けて順調に進展している。
確立したGRABセンサーゼブラフィッシュ(GRABATP、GRABADOフィッシュ)を用いたアルコール性肝障害ならびに食事性脂肪肝モデルでのATP/ADO動態変化をもとにして、今後は以下の2点に焦点を絞って本研究を進める計画である。①可逆的・不可逆的を含め肝障害各病態時期におけるATP/ADO動態の詳細な解析を行い、肝障害時における肝細胞外DAMPSの病態生理的意義を明らかにする。②次年度は、当初から予定していた「肝ATP、ADO動態を指標とした治療薬候補(既存薬や大分大学にて独自に開発されたアルカロイド化合物ライブラリーなど)のin vivoスクリーニング」を開始し、NAFLD/NASHに対する新たな治療基盤となりうる候補薬剤の探索を進める。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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