研究課題
脂肪性肝疾患(SLD)の新分類が発表され、従来NAFLD/NASHと呼ばれていた肝臓疾患が代謝機能不全をベースとした代謝機能異常関連脂肪性肝疾患/肝炎(MASLD/MASH)、アルコール性肝疾患(ALD)、そしてこれらの病態が併発しているMetALDなどに分類されることとなった。一方で、SLDに対する有効な治療法は未だ確立していないのが現状である。近年、肝細胞外ATP、Adenosine(Ado)がDAMPsとしてSLDの病態進行に関わることが報告されているが、肝細胞外ATP、Ado動態と病態進行度との相関や、肝細胞外ATP、Adoの病態生理学的意義に関する報告は少ない。本研究では肝細胞特異的にATP、Ado動態をGFP蛍光輝度にて可視化するGRABセンサーゼブラフィッシュを独自に樹立し、様々なSLDモデルを作製し解析することで、肝細胞外ATP、Ado動態の病態生理的意義を明らかにするとともに、これらを指標とした新たな治療基盤を開発することを目的としている。本年度は、樹立したGRABセンサーゼブラフィッシュに、高脂肪食負荷ならびにエタノール負荷を行いMASLDモデル、ALDモデルを作製して解析を行った。その結果、両方のモデルにおいて肝臓のGFP輝度が増し、SLD病態進行に伴い肝細胞外ATP、Ado含量が増加することが明らかとなった。さらに、VNUT阻害剤の投与により、肝細胞外ATP、Ado含量と相関するGFP輝度は低下し、それに伴ってSLD病態の改善も認められた。以上の結果を論文として発表した(Sci Rep., 2024)。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、肝細胞外ATP、Ado動態とSLD病態進行度との相関を明らかにし、DAMPsを介するSLD病態生理機構の一端を解明することができた。さらに、肝細胞外ATP、Ado含量を減少させることでSLD病態が改善することも明らかとなり、論文として発表することができた。
本年度までに、GRABセンサーゼブラフィッシュを樹立し、肝細胞外ATP、Ado動態とSLD病態進行度との相関を明らかにすることができた。今後は、SLD病態改善効果が期待されている薬剤をMASLD、MASHモデルに投与し、肝細胞外ATP、Ado動態を指標とした新たな治療基盤の開発を進める計画である。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 3件)
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