研究課題/領域番号 |
21H03697
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
鈴木 玲治 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 教授 (60378825)
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研究分担者 |
矢野 善久 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 教授 (20230287)
大石 高典 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (30528724)
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 名誉教授 (80153419)
野間 直彦 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80305557) [辞退]
河野 元子 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 客員准教授 (80552017)
島上 宗子 愛媛大学, 国際連携推進機構, 教授 (90447988)
増田 和也 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (90573733)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 環境調和型農林水産業 / 在来知 / 地域ブランド化 / 森林資源利用 |
研究実績の概要 |
2022年度は滋賀県余呉町中河内においてタニウツギなどが優占する低木林を伐開・火入れし、焼畑によるヤマカブラの栽培を行った。小規模な黒斑病の発生が認められたものの感染が焼畑全域に広がることはなく、ヤマカブラの生育状況は良好であった。収穫したヤマカブラについては、例年通り京都市のレストランや漬物屋に食材として提供しており、独特の風味と食感を持つ在来作物として高い評価を得ている。 焼畑栽培と常畑栽培のヤマカブラに含まれるビタミンC、アントシアニンや、がん予防効果が期待できる抗変異原性などの機能性成分の比較分析を行ったが、両者の間に統計的に有意な差は認められなかった。しかしながら、市販の白カブに比べるとヤマカブラは高い抗変異原性を示した。また、火入れ前後の土壌分析を行ったところ、灰の添加による土壌pHや交換性塩類の増加、焼土効果に伴うアンモニウム態窒素の増加が認められた。 前年の焼畑で伐採したスギの幹は、キャンプでの調理・暖取り等への活用を想定したウッドロケットストーブに加工し、燃焼時間や燃焼温度の測定を行った。また、比較のためヒノキ、コナラ、シラカバでも同様の実験を行った。スギやヒノキはシラカバやコナラに比べると火つきと火持ちのバランスがよく、調理・暖取り用に適している樹種であることが分かり、ウッドロケットストーブへの加工が日本の中山間地域における放棄人工林活用法の有効な一手段となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
余呉町での焼畑実践は毎年順調に行われており、休閑地の植生回復状況や火入れがもたらす土壌養分動態への効果など、在来知の検証に必要な科学的データの蓄積も進んでいる。焼畑による放置人工林の再生については、立地別のスギの強度試験やスギ丸太を加工したウッドロケットストーブの燃焼試験によるデータが蓄積できており、スギの品質に応じた利用法の検討が進んでいる。在来作物の地域ブランド化については、ヤマカブラの食感・食味試験や機能性成分の分析、調理方法の検討などを進めており、他のカブと比較したヤマカブラの特長が抽出されつつある。また、焼畑フォーラムによる活発な意見交換も行っており、各地域の焼畑復活の核となった地域固有の要因や普遍的要因の抽出を進めている。以上より、交付申請書に記載した計画に沿って、概ね順調な調査研究活動を展開中であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、農山村に眠る地域資源の活用により食・森・地域を有機的に繋ぎ、新たな地域資源を創出する有効な手段として、焼畑の果たしうる役割を実証的に検証することを最終的な目的としている。 今後も余呉での焼畑実践を継続しながら、特に放置植林地のスギの活用とヤマカブラの地域ブランド化に力点をおいた調査研究活動を展開したい。また、日本各地で営まれる焼畑地で聞き取り調査や参与観察を行い、各々の地域の生態環境に応じた作物栽培や火入れのあり方、焼畑運営の社会経済的な存続要因や成立過程、現状での利点や問題点を整理する予定である。2024年3月には、日本各地の焼畑実践団体間の情報交換と日本の焼畑の将来像に関する議論を深めるため、滋賀県余呉町において第4回焼畑フォーラムを開催する。
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