研究課題
本研究では、1990年代以降のベトナム紅河デルタにあるナムディン省コックタイン村を対象として、歴史的に形成されてきた村落共同体の変容と再編を明らかにし、現在の地域社会における新たな共同体の形態と機能について考察することを目的としている。コロナ禍のため、当初予定していた調査を実施することはできなかった。しかし、2021年度に繰り越していた資金を活用して、オンライン・フィールドワークの実施、得られた資料の整理、研究成果の発信のための調査報告書作成と、そのベトナム語訳の作成を行った。オンライン・フィールドワークでは、携帯電話とパソコンを用いて、コックタイン村とインターネットを介して日本各地(研究分担者が居住する地域に分散)とオンラインで接続し、村人に対するインタビュー調査を実施した。その結果、コロナ禍以前から始まった急激な、村内のインフラ整備が急速に進んでいることがわかった。特に、道路、農業用水路、居住域の排水路と上水道整備が急速に進んでいることがわかった。道は舗装され、車の通行を前提として道幅も拡張されていた。上水道の整備は、それまでの井戸水の利用から、メータを用いた上水道利用へと変化をもたらした。このように、村の生活レベルは急激に様変わりした。さらに、そうしたインフラ整備にともなう世帯間の調整に、村落共同体が依然として重要な役割を担っていることも明らかになった。これらの成果を報告書として作成した。その際に、ベトナム語訳もつけ、村人と共有した。
2: おおむね順調に進展している
現地調査を実施することができないものの、インターネットを介したオンライン・フィールドワークを実施することができた。日本側の調査メンバーと村人のこれまでの長期間にわたる人間関係に基づくことで、新しいタイプの調査を実施することができた。そもそもの調査を継続することに意味があっただけでなく、新たな調査手法を実現することができたという意味においても意義ある活動ができた。
オンライン・フィールドワークで明らかになった、村内の急激なインフラ整備が、村全体のどの範囲におよぶのかを詳しく調査する。インフラ整備の資金、インフラ整備に伴う土地利用の変化に対応した、農民の土地所有の変化、行政村と、行政村の中で生産消費に関わる調整役としての合作社の役割を明らかにする。
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Frontiers in Forests Global Change
巻: 6 ページ: 1-16
10.3389/ffgc.2023.1106723
東南アジア:歴史と文化
巻: 51 ページ: 101-104