研究課題/領域番号 |
22H00794
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 友敬 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (80209064)
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研究分担者 |
笹岡 愛美 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50557634)
後藤 元 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (60361458)
増田 史子 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (60362547)
南 健悟 日本大学, 法学部, 教授 (70556844)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 自動運航船 / 自律的運航船 / 電子船荷証券 |
研究実績の概要 |
本研究は、現在進行中の第4次産業革命のもとで生じつつある海事産業のデジタル化が海事法にもたらす革新のうち、①自動運航船を用いた運航により生じる責任と②ブロックチェーン技術を用いた運送書類の電子化のもたらす法律問題について検討し、両者について、立法論・解釈論的な提言を行うことを目的とする。以下,①②に分けて,2022年度の研究実績を説明する。 本年度は,自動運航船の事故に伴う船舶所有者の責任の検討、自動運航船の事故に伴う造船業者・自動運航プログラム提供者の責任の検討、自動運航船の事故に伴う遠隔操作者の責任の検討を中心に行った。検討に際しては、完全自律運航に至らないレベルを想定し、いくつかの典型的なシナリオを前提とした。基本的には、現行法の過失責任を前提としたスキームで対応しうるが、船舶の自動運航プログラムの安全性の評価の視点をさらに明確化する必要性があることが分かった。 運送書類の電子化については、日本国内における立法の動きが加速したため、その動向を踏まえ、UNCITRALモデル法等の依拠する紙の有価証券との機能的等価物というアプローチを前提とする研究を進めることとし、シンガポール等、すでに船荷証券の電子化に関する立法を進めた外国法の検討を踏まえ、立法上の課題を洗い出した。具体的には、船荷証券・海上運送状等に関する現行法の規定に対応する規定のあり方(たとえば、電子船荷証券の発行要件、船荷証券の種類や裏書方法に対応する規定の要否、紙の船荷証券との転換等)のほか、システムの信頼性の要件、システムに対する認証や登録の要否等政策的な視点を含む諸問題について検討した。 なお自動運航船の事故に伴う責任に関しては、比較法国際アカデミーにおいて、運送書類の電子化に関しては万国海法会(CMI)において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自動運航船を用いた運航により生じる責任とブロックチェーン技術を用いた運送書類の電子化のもたらす法律問題のいずれについても、精力的な検討を続けると同時に、その成果の一部を公表できており、本研究課題は順調に進捗している。 ただし、研究実績においても触れたとおり、船荷証券の電子化については、日本の国内立法の動きが予想よりも早く、すでに一定の方向性をもった立法提案がなされつつあることに鑑み、当初の予定よりも研究ペースを上げると同時に、検討項目、検討順序を変更する必要に迫られている。このような予定外の状況の発生を考慮し、「おおむね」順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
自動運航船を用いた運航により生じる責任については、①自動運航船の事故に伴う造船業者・自動運航プログラム提供者の責任の検討、②自動運航船の事故に伴う遠隔操作者の責任の検討、③自動運航船の事故に伴う船級協会の責任の検討、④自動運航船の傭船者・船舶賃借人等の法的地位・責任の検討、⑤自動運航船の事故への責任制限制度の適用、⑥自動運航船の事故への責任集中制度の適用といった応用問題の検討に進みたい。またこれとあわせて、事故と責任に関する経済分析といった基礎理論の検討も行う。 船荷証券の電子化については、日本の国内立法の動きが予想よりも早く、すでに一定の方向性をもった立法提案がなされつつあるため、紙の有価証券との機能的等価物というアプローチを前提とした具体的な条文のあり方についての検討を優先的に行う。この問題についてある程度結論が見えた段階から、電子的船荷証券に関する準拠法ルールの検討や国際条約による規律の統一の可能性(ロッテルダム・ルールズの発効に関する最新動向)についても調査・検討を行うこととする。
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