研究課題/領域番号 |
22H00901
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
米村 千代 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (90262063)
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研究分担者 |
清水 洋行 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (50282786)
吉岡 洋介 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (90733775)
小風 尚樹 千葉大学, 人文社会科学系教育研究機構, 助教 (80880161)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 家族変動 / 歴史社会学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、戦後日本の家族変動過程を、都市的要素と農村的要素が併存する千葉県下の農業地域を対象として、両者を媒介する食と農をめぐる動きに着目することから捉え直すことにある。2022年度は主に今後分析を進めていくためのデータ収集と計量調査を実施した。まず、歴史社会学的分析に関しては、千葉県において1947年から2003年まで刊行された農業普及誌『農業千葉』を主な資料として、千葉における農業政策の変容過程を追うとともに、普及誌に掲載されている女性たちの語りの分析に着手した。また農業普及誌刊行の社会的背景および比較を目的として、他地域の普及誌をはじめとする関連資料の収集を行った。『農業千葉』に関して分析に必要となるデータはほぼ収集を終えることができた。また、千葉県において50年近く活動している有機農業グループの調査については、グループのスタート当初から今日にいたる通信資料を借り受けることができた。この資料の整理とPDF化の作業を開始した。このグループを立ち上げた生産者ご家族にインタビュー調査を実施した。 また、計量研究については、9月に千葉県北西部を対象地域として、世代間関係とライフスタイル・地域意識に関する計量調査を実施した。層化二段階無作為抽出法により抽出された3016サンプルを対象に郵送調査を実施し、有効票は1484票、有効回収率は49.2%であった。2022年は、データクリーニングと基礎集計までを中心におこなった。地域意識の変容を具体的に見ていくために次年度以降パネル調査を実施することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歴史社会学的資料分析に関して、2022年に収集した有機農業グループの通信記録等のスキャンとデータ整理を継続して行い、手書きの資料のデータ化、分析方法についての検討を行った。コロナ前に参与観察していた同グループの定例会が2023年に再開され、再び参与観察が可能となった。生産者側へのインタビューは2022年に実施したが、今後は消費者側へのインタビュー調査を実施していく予定である。地域活動・地域団体調査に関しては、千葉市のあるコミュニティ財団理事および子ども食堂主催者による講演会を開催した。 計量調査に関しては、2022年実施の調査において高い有効回収率が得られたため、変化の過程を捉えるより詳細な分析が可能となった。そのため2023年に第2波パネル調査を実施した。有効票は 1,148 件で有効回収率は 77.4%となった。22 年調査の計画標本 3,016 名(100.0%)のうち 1,148 名(38.1%)の 2 時点分のパネルデータが得られた。引き続きパネル調査を実施することで社会意識の変容過程を時点を追って分析することが可能となると同時に、パネル調査の再協力率や脱落に関する方法論的検討も加えられることから、第3波パネル調査も継続的に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
『農業千葉』については、資料収集とデータ構築がほぼ完了しているため、テキスト・マイニング分析を進める。他方、有機農業グループの通信資料は、その多くが手書き文書のため計量分析の方法にはさらなる検討の時間が必要であると判断した。そのため研究期間中に分析をまとめるためには、計量分析ではなく、内容を質的に分析する手法を中心とする。文書資料の分析に加え、インタビュー調査を実施する。そのことを通して生産者と消費者の50年間のライフヒストリーを、文字資料と重ね合わせて分析することが可能になった。計量調査は、第3次パネル調査を実施し22年以降の対象者の意識変容を詳細に追う。この分析を通して短期間の意識変化、特にポストコロナ期のライフスタイルや意識の変化を捉えることができると思われる。歴史社会学的手法から長期的に家族変容を追うことと計量調査による短期的な意識変容の把握を併用して、最終年度に向けて重層的な分析をさらに進めていく。
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