研究課題/領域番号 |
22H01136
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
村重 淳 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (40302749)
|
研究分担者 |
片岡 武 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20273758)
宝谷 英貴 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (30636808)
柿沼 太郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (70371755)
丸野 健一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80380674)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 非線形波動 / 海洋波 / 流体力学 / 数理モデル / 応用数学 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,振幅の大きいダイナミックな海洋波の非線形・非定常運動の解析に適した数理モデルの導出とその妥当性の検証である.令和4年度(1年目)は,以下の三つのテーマについて研究を実施した.研究成果は,発表論文4件(査読有4件,国際共著3件),学会発表15件(招待講演2件,国際講演7件)で公表されている.また,年度末に国際研究集会 Recent Advances on Nonlinear Water Waves を開催し,令和5年度に予定している国際研究集会 Workshop on Nonlinear Water Waves and Related Topics の準備を開始した. 1. 数理モデル:(1) 密度の異なる2層流の界面で発生する内部ボア(階段波)の数理モデルを複素解析の手法を用いて導出し,解の特異性を調べた(村重).(2)船の背後に形成される航跡波の数理モデルの導出と理論解析手法の構築を行い,小振幅でも非線形性が重要であることを明らかにした(片岡).(3)代表的な2次元非線形波動方程式であるDavey-Stewartson方程式と矢嶋-及川方程式理論的解析を行い,ソリトン相互作用に関する考察と厳密解の構成を行なった(丸野). 2. 数値計算:(1)内部ボア(村重)と航跡波(片岡)の数値計算法を開発した.(2)非線形浅水波モデルの数値計算により,海底と河川の地形が津波の生成・増幅過程に与える影響を調べた(柿沼).(3)自由表面の数値計算法である自己適合移動格子スキームの時間空間離散化について調べた(丸野). 3. 実験:(1)航跡波の水槽実験を行い,数理モデルに対する理論解析と比較した(片岡).(2)ローグ波(外洋で突発的に現れる巨大な波)に関する水槽実験を行い,変調不安定波の観点から考察した(宝谷).宝谷氏の研究は,日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞)を受賞した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度(1年目)は,最終的な目標(数理モデルの導出とその妥当性の検討)を達成するための準備段階として,以下のように進めた. 1. 数理モデル:研究対象とする海洋波(内部ボア(階段波),航跡波(船の背後に形成される波),ローグ波,津波)とそれらの流体力学に基づいた問題設定を明確にし,理論的解析手法の基礎を固めた. 2. 数値計算:上記の問題に対する数値計算法を開発した.特に,水面のような自由表面の境界条件の取り扱いについて,既存の手法の問題点を整理し,改良方法を検討した.また,比較的大規模な数値計算のための環境を整えた. 3. 実験:本研究における実験の目的は,数理モデルの妥当性を実験結果との比較により行うことである.そのための,実験環境の整備と手法の開発を行なった. また,宝谷氏の日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞)受賞と,片岡氏の論文がトップジャーナル Physica D に掲載されたことは,特筆に値する.さらに,2年目(令和5年度)の秋に海外の専門家を招いて開催する国際研究集会(湘南国際村センター)の準備を行なった.以上より,「おおむね順調に進展している」と判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終的な目標は,振幅の大きいダイナミックな海洋波の非線形・非定常運動の解析に適した数理モデルの導出とその妥当性の理論・実験・数値計算による検証である.今後は,1年目(令和4年度)の準備をもとにして,実施計画にしたがいさらに研究を進める.具体的な推進方法を,以下にまとめる. 1. 数理モデル:1年目(令和4年度)の研究により設定された問題(内部ボア(階段波),航跡波(船の背後に形成される波),ローグ波,津波)の設定からスタートし,現象の本質をとらえるために適した数理モデルを提案する.特に,複素解析・関数解析等の現代的な数学的手法に基づいて,現象の理論的解析に適した支配方程式や解の表現を検討する. 2. 数値計算:上記の数理モデルの解析に適した数値計算法を開発し,実験結果との比較のための数値計算を実行する.この比較の目的は数理モデルの妥当性の検証であるので,計算結果の誤差評価が重要となる. 3. 実験:1年目(令和4年度)に整備した実験環境のもとで,数理モデルの妥当性の検証のために必要な実験データを得ることを目標とする. 4. 実施計画では2年目(令和5年度)に開催が予定されている国際研究集会(湘南国際村センター)の準備を,引き続き行う.
|