研究課題/領域番号 |
22H02584
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
後藤 祐児 大阪大学, 大学院工学研究科, 特任研究員 (40153770)
|
研究分担者 |
山本 卓 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (70444156)
山口 圭一 大阪大学, 大学院工学研究科, 特任講師 (90432187)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 蛋白質 / 生体分子 / 老化 / 蛋白質凝集 / アミロイド線維 / 過飽和 / 溶解度 / 相転移 |
研究実績の概要 |
蛋白質の構造物性の基盤は『アンフィンゼンのドグマ』であり、蛋白質がフォールディングして形成する機能的構造はアミノ酸配列によって決まる熱力学的最安定状態とみなす。他方、高齢化に伴う疾患の多くにおいては、蛋白質がミスフォールディングして形成するアミロイド線維が関わる。本研究では『溶解度』や『過飽和』に基づき、生体におけるアミロイド線維形成の実体を明らかにし、その制御を目指す。今年度は、アミロイド凝集誘導検出装置HANABIや各種の生物物理学的、蛋白質科学的手法によって以下の研究項目を実施した。 ①透析アミロイドーシスの発症機構:透析患者、対照者から得た血清を用いて、ア透析アミロイドーシスの危険因子を探索した。その結果、β2ミクログロブリン濃度上昇(第1危険因子)、透析期間(第2危険因子)に加え、血清アルブミン濃度の減少が第3の危険因子であることを明らかにした。血清アルブミンが天然型β2ミクログロブリンと相互作用することによって変性を抑制し、アミロイド線維の形成を抑制することを明らかにした。本結果は論文発表(Nature Commun. 2022)して大きな反響があった。 ②アミロイドーシスの発症に関わる生体因子の探索と分子機構:ポリリン酸をはじめとする様々な生体因子の効果を解析した。その他の添加剤や環境因子を含めたアミロイド線維形成機構を提唱した。 ③液液相分離とアミロイド形成:ポリエチレングリコールとデキストランが液液相分離によって形成する液的が、αシヌクレインのアミロイド線維形成を促進することを明らかにして、その分子機構を解析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①透析アミロイドーシス発症機構:「血清はアミロイド原因蛋白質と相互作用することによってそれを安定化し、アミロイド線維形成、アミロイドーシスを抑制している」というプロテオスタシスの破綻に基づくアミロイドーシスの発症機構を示した。まさに期待した重要な結果であり、この一般性を更に検証するためにいくつかのアミロイド蛋白質についても同様の実験を計画している。 ②生体因子と統合的な分子機構:溶解度と過飽和に依存したよりさまざまなアミロイド線維形成反応を統合し、より普遍的なアミロイド形成機構の構築を目指している ③液液相分離とアミロイド形成:ポリエチレングリコールとデキストランによって形成される凝縮体(Condensates)はαシヌクレインのアミロイド線維形成を促進したが、その詳細な機構や一般性は不明である。これを追求することによって、より普遍的なアミロイド線維形成機構を明らかにすることができると期待して、研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
「溶解度」と「過飽和」に依存した「晶析」は、アミロイド線維だけではなく、機能性アミロイド、尿路結石や痛風などの結石症、アクチンやミオシンの重合など、生体や生命現象に関わるさまざまな場面で重要な役割を担っていることが予想される。これらを視野に入れて、「過飽和生命科学の開拓」を目指し、さらに研究を展開して行きたい。
|