今後の研究の推進方策 |
b3アドレナリン受容体 (b3AR) は、ノルアドレナリンを受容し、脂肪細胞における脂肪分解および消化器官の平滑筋弛緩を担う。膀胱における排尿筋弛緩に大きく関与することから、b3選択的作動薬ミラベグロンが過活動膀胱に対する治療薬になっている。 b1-3受容体へのサブタイプ選択性は副作用に直結しており、ミラベグロンによるb1の活性化は心不全リスクがあるため、より選択性の高い薬剤が求められている。我々は既にイヌ由来b3ARとGs蛋白質の複合体構造を報告しており、狭い細胞外ポケットが b3選択性に重要であることが示唆されている。ミラベグロン以外にも、副作用の低減したビベグロンを含め分子構造が大きく異なるb3選択的作動薬が複数存在するそうした薬剤とb3AR-Gsとの複合体構造を網羅的に解析し変異体実験や分子動力学解析を行い、薬剤のb3AR選択性を詳細に解する。 リゾフォスファチジルセリン (LysoPS)はリゾリン質の一種であり,LysoPSを受容するGPCRは3種類存在し(LPS1-3) マスト細胞の脱顆粒を促進する作用の他,神経細胞の突起伸長促進,T細胞の活性化抑制,細胞遊走などの作用が知られている。特にLPS1作動薬投与では腫瘍サイズが縮小することやLPS1 KOマウスでは担がんの腫瘍サイズが増大することから LPS1作動薬は抗がん剤としての可能性がある。 LPS1は他のリゾリン脂質受容体と異なりGiのみを選択的に活性化する。既にLPS1 選択的LysoPSが結合したLPS1-Gi複合体の 3.4A分解能の構造解析に成功しており構造情報およびそれに基づいた変異体実験によってリガンド認識機構を解明し受容体活性化機構を解明する。
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