研究課題/領域番号 |
22H02799
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
渡邉 裕介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (20562333)
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研究分担者 |
中川 修 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (40283593)
八代 健太 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60432506)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 心臓 / 発生 / 前駆細胞 / 細胞系譜 |
研究実績の概要 |
本研究では、心室筋細胞への分化運命決定および心室筋細胞特異的な遺伝子発現制御の分子機構を明らかにすることを目的としている。研究代表者らが同定したHey2エンハンサーは心原基形成期の左心室筋前駆細胞で転写活性を示していることから、左心室筋前駆細胞の発生と分化を解析する上で有用である。本年度は、Hey2エンハンサー-LacZレポーター Tgマウスを用いて、心原基形成期におけるHey2エンハンサー活性化細胞の特徴について詳細に解析した。シングルセルRNA-seq解析からは、Hey2エンハンサーがJuxta-cardiac field(傍心臓領域)の心臓前駆細胞と、分化中の心筋細胞で活性化していることが明らかとなった。また、RNAscopeによるHey2エンハンサー活性と各心臓領域マーカーとの共染色解析からは、心原基形成前期ではHey2エンハンサーは心原基吻側に存在するJuxta-cardiac fieldで活性化しており、心原基形成後期ではJuxta-cardiac fieldおよび心原基で分化中の心筋細胞で活性化していることが明らかとなった。Hey2エンハンサー-DreERT2 Tgマウス、Tbx5-CreERT2 TgマウスとDre活性およびCre活性によって蛍光レポーターが発現するマウスを用いた二重細胞系譜解析からは、Hey2エンハンサー活性化細胞系譜とTbx5発現細胞系譜は共に左心室筋へと寄与するものの、心原基形成前期からの両細胞系譜は左心室筋でほとんど重複していないことが示された。このことから、左心室筋は心原基形成前期に存在する少なくとも2つの前駆細胞集団に由来して形成されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、Hey2エンハンサー-LacZ Tgマウスの心原基形成期胚を用いたシングルセルRNA-seq解析、RNAscopeによる遺伝子発現解析をさらに進行させて、心原基形成を前期および後期に分けた上で、Hey2エンハンサーが活性化している心臓前駆細胞がJuxta-cardiac fieldに存在することを明らかにできた。また、Hey2エンハンサー-DreERT2 Tgマウス、Tbx5-CreERT2 TgマウスとDre活性およびCre活性によって蛍光レポーターが発現するマウスを用いて、心原基形成期のHey2エンハンサー活性化細胞とTbx5発現細胞の同一胚内での二重細胞系譜解析を行い、心原基形成前期および後期からの両細胞系譜の左心室筋への寄与の違いについて明らかにすることができた。さらに、心原基形成期におけるHey2エンハンサー活性化細胞の重要性を解析するために、Hey2エンハンサー-CreERT2マウスとRosa-DTA(ジフテリアトキシンA)マウスを交配してタモキシフェン投与時のHey2エンハンサー活性化細胞をDTAにより除去する実験を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
心原基形成期のJuxta-cardiac fieldおよび胎仔期(胎生8.5~9.5日)の心室筋においてHey2エンハンサー活性を制御する分子機構を解析するため、シングルセルRNA-seqデータおよびHey2エンハンサーの転写因子予想結合配列を元にエンハンサー制御候補因子を選別する。選別したエンハンサー制御候補因子の遺伝子改変マウスを導入または作製してHey2エンハンサー-LacZ Tgマウスと交配し、心原基形成期および胎仔期でのHey2エンハンサー活性の変化を解析することで、それぞれの発生時期においてJuxta-cardiac fieldまたは心室筋で特異的に活性化している分子機構を明らかにする。 また、Hey2エンハンサー-CreERT2マウスとRosa-DTA(ジフテリアトキシンA)マウスを交配し、各発生段階の胎仔の妊娠マウスにタモキシフェンを投与してHey2エンハンサー活性化細胞をDTAにより除去する解析を行い、Hey2エンハンサー活性化細胞の心臓形成における重要性を明らかにする。
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