研究課題
これまでに我々はイオン刺激により特徴的な四重鎖を形成し,特定の標的分子に結合するDNAアプタマー(Ion-Responsive DNA Aptamer, IRDAptamer)を開発 し,このIRDAptamerが細胞膜透過能を有することを明らかにしている.今年度は,細胞内発がんタンパク質であるPPM1Dを標的としたIRDAptamerを用い,本分子の細胞内導入画像を用いてAI技術による細胞内導入評価を実施した.細胞膜を透過し,細胞内に局在化したIRDAptamerの細胞画像,ならびに細胞内に導入されていない細胞画像を用いてAIの深層学習による画像評価を実施し,AIによる細胞内導入効率を評価できる系を確認した.一方,IRDAptamerを新規創薬モダリティとして展開するためには,多様な疾患原因タンパク質に対して,個々に結合可能なIRDAptamer分子を同定することが必須である.そこで,新規疾患原因タンパク質として,がんの悪性化の原因でもある上皮間葉系転換(EMT)や神経疾患への関与が示唆されている細胞内タンパク質Scp1を標的としたIRDAptamerの探索を実施した.我々が独自にデザインしたIRDAptamerライブラリを用いて,ヒトScp1に対するSELEXを実施し,スクリーニングを8サイクル実施することにより,複数の収束配列を得た.得られたScp1結合IRDAptamer候補の塩基配列のビオチン標識体を化学合成し,Scp1組み換えタンパク質に対するELISA結合試験を実施することにより,EMT関連酵素Scp1を認識するScp1結合IRDAptamerを同定することに成功した.
2: おおむね順調に進展している
本年度の当初計画として,実験1IRDAptamerの膜透過性,細胞増殖抑制効果,AI画像評価による検証,ならに実験2.EMT関連タンパク質を標的としたIRDAptamer 汎用性の確認を計画してた.今年度IRDAptamerのAI画像解析による細胞内導入評価が可能であることを実証できたこと,また,EMT関連タンパク質であるScp1を標的とした新規IRDAptamerの同定に成功したことから,研究計画がおおむね順調に進展していると判断した.
今後の研究推進方策として,2022年度の研究成果をもとに同定したEMT関連タンパク質Scp1結合IRDAptamerのin vitro機能評価,ならびに細胞膜透過性・薬効評価を中心に研究を実施する.Scp1結合IRDAptamer分子について,Scp1の部分配列欠損体に加え,類似のSer/Thrプロテインホスファターゼの組み換えタンパク質を用いたELISA解析によりScp1結合部位と酵素特異性を明らかにする.また,Blitzシステムを用いたバイオレイヤー干渉により同定IRDAptamerの解離定数を求める.加えて,本分子の3’末端に蛍光分子を付加したIRDAptamer分子を複数のがん細胞に添加し,細胞膜透過能,ならびに細胞毒性を評価する.
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
Processes
巻: 10(8) ページ: 1501
10.3390/pr10081501
Peptide Sci.
巻: 2021 ページ: 97-98
巻: 2021 ページ: 79-81