研究課題
腎臓の線維化に特徴づけられる慢性腎臓病(CKD)患者は本邦で現在1330万人いるものの、腎臓病の根本的な治療法はいまだに存在せず、新たな治療法の開発は喫緊の課題である。腎臓には豊富な交感神経支配が存在するものの、腎交感神経経由の腎保護作用機構は解明されていない。本研究では、光で選択的に腎交感神経を刺激する方法を開発し、新規バイオセンサー、シングルセルRNA-seqの技術を用いて、腎交感神経による直接的な腎臓保護機構を解明する。特に、交感神経刺激を受け取った細胞と他の細胞との相互作用に着目し解析を進める。これらの成果を基盤に、革新的な創薬の標的分子の探索を目指す。本年度は、光で選択的に腎交感神経を刺激する方法の開発に注力し、特定の神経を光で特異的に刺激するオプトジェネティクスの手法を活用し、特異的に腎交感神経を刺激する手法を確立した(主担当:井上、副担当:安部)。交感神経に青色光をあてると、神経を興奮させることのできるDBH-Cre: ChR2マウスの交配も順調に進み、目的のマウスを得ることができた。始めに、腎動脈周囲(腎交感神経が並走)を光刺激することで、腎交感神経を特異的に刺激する手法(麻酔下)を確立した。その後、体外から腎交感神経を刺激できる手法を確立した。埋め込み型のLED光源、遠隔制御可能な電池式刺激装置を組み合わせ、LED光源を腎交感神経の近くに埋め込むことで、体外から意識下で腎交感神経を刺激する手法を確立した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定とは手法は異なったものの、体外より意識下で腎交感神経を刺激する手法を確立できたため、おおむね順調に進展していると言える。
確立したオプトジェネティクスの手法を用いて腎交感神経を光で刺激し、腎障害モデルを組み合わせることにより、腎交感神経が尿細管を保護(臓器保護)するかどうかを評価する。また、血行動態への影響ができるだけ少なく、腎保護作用が最大化する交感神経刺激の刺激方法を見出す。さらに、腎臓内のどの細胞が腎臓交感神経シグナルを受け取るかを明らかにするために、光による特異的な腎交感神経刺激をしたマウスおよびsham刺激をしたマウスの腎臓を用いて、腎臓細胞のシングルセルRNA-seq解析を行い、個別細胞レベルでアドレナリン受容体の下流にある遺伝子発現を網羅的に評価し、腎臓内で交感神経刺激を直接受け取る細胞と二次的に刺激を受ける細胞を明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件) 備考 (1件)
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