研究課題/領域番号 |
22H03213
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河嶋 厚成 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50746568)
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研究分担者 |
木村 友則 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, センター長 (00631300)
元岡 大祐 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (10636830)
西塔 拓郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20646468)
野々村 祝夫 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30263263)
和田 尚 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任教授(常勤) (70243459)
神宮司 健太郎 大阪大学, 大学院薬学研究科, 特任講師(常勤) (80707571)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Dアミノ酸 / 血液内細菌叢 |
研究実績の概要 |
ヒト生体内では、腸内細菌のみならず血液中にも細菌の遺伝情報が存在し、宿主にとって臨床的影響を与えることが報告された。本研究では、尿路上皮癌患者ならびに腎細胞癌患者における血液中に細菌遺伝情報が存在すること、及び宿主に対する臨床的意義を明らかにすることを目的とする。 まず診断的意義を有するかを検討した。 腎細胞癌患者では腎細胞癌患者の血液内に健常者と比較して高発現する細菌情報を同定するため、腎癌患者88人と健常者10人の血清細胞外小胞からDNAを抽出し、16S rRNAメタゲノムシークエンスを実施した。その結果、Sphingomonadales, TM7-1, Bacteroidiaの3種が、腎癌患者の血清細胞外小胞内で豊富に認められることを見出した特に上記の3種の細菌遺伝情報を組み合わせたBTS indexを作成し、高率な診断能を有する細菌遺伝情報に基づいた血液診断マーカーを創生した。 次に尿路上皮癌患者では細胞壁を構成するDアミノ酸の一つであるD-Alaの発現が尿路上皮癌患者で血液内ならびに癌組織内で有意に上昇しており、独立した3コホートを用いてAUC0.7 以上と優れた診断能を持つことを明らかにした。尿路上皮癌の血液を元とした診断マーカーは存在せず、特許申請を行っている。またD-Alaは腸管由来であることを動物モデルから確認するとともに、癌細胞株に対して増殖能、浸潤能、遊走能のいずれにおいても有意な影響を持つことを明らかにした。また、尿路上皮癌自然発癌モデルマウスを確立しており、その血清内においてもDAlaが発現上昇していること、ならびに関連するアミノ酸を除去することで発癌が抑制できることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
診断マーカーとしての重要性を明らかにすることができた。 また、Dアミノ酸を用いて、現存しない尿路上皮癌患者の血液診断マーカーを開発し、特許出願まで行っており、予定通り進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、腎細胞癌患者の発現する細菌種の一つに注目している。前述の腎癌患者88人とペアとなる腎癌組織から腫瘍浸潤リンパ球を抽出し、免疫チェックポイント分子発現に基づいた局所免疫情報と血液内細菌遺伝情報との相関を検討した。その結果、制御性T細胞の特徴を有するCD4陽性T細胞Fr.V(PD-1low Tim-3+ CD4+) (Kawashima et al. Sci Rep 2020)の発現と血液内Bacteroidia DNA量に正の相関を認めた (p< , r= )。既報において、糞便中のBacteroidia DNA量は腫瘍局所の制御性T細胞発現と相関することが知られており、我々の結果を支持するものと考えられる。 今までの研究成果から、血液内細菌情報が腎細胞癌患者の診断マーカーとなりうることならびに腎癌組織内の免疫状態を反映しうること示唆された。今後、診断マーカーについては、独立した別コホートを用いた検証を行うとともに、進行性腎癌の免疫チェックポイント阻害薬治療患者群を対象に、治療効果予測マーカーとしての有効性を検討する方針である。 また、16S rRNA解析では詳細な細菌種の同定は困難である。細菌種の同定や機能解析にはショットガンメタゲノム解析が必要となるが、PCRを行わないため検出困難なケースがあること、コストが高いことなどが問題としてあげられる。今後、これらの技術的・コスト上の問題を解決できれば、ショットガンメタゲノム解析で細菌種の同定を検討する方針である。
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