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2022 年度 実績報告書

タンパク質翻訳合成およびアミン類代謝経路の補正による抗老化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H03515
配分区分補助金
研究機関佐賀大学

研究代表者

辻田 忠志  佐賀大学, 農学部, 講師 (20622046)

研究分担者 伊東 健  弘前大学, 医学研究科, 教授 (10323289)
植村 武史  城西大学, 薬学部, 准教授 (50401005)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードポリアミン / Nrf1 / スペルミジンオキシだーぜ
研究実績の概要

これまで、老化とROS代謝に関与する分子メカニズムの解明に挑み、老齢マウス(3年齢、以下3Yと表記)や早期老化モデルであるKlotho欠失マウス(Klotho-/-、以下KLと表記)肝において、Nrf1タンパク質が顕著に減少することを見出した。3Y、KLおよびNrf1欠失マウスで共通して発現上昇するSmoxの異所的発現の分子メカニズムと、高攻撃性の低分子アルデヒド、アクロレインを産生メカニズムの解析を進め、内因性刺激物質の補正が抗老化を実現できるかについて検証し、介入方策を提唱することを目的としている。
タバコの煙などに含まれるアクロレインはROSと比較して1,000倍以上も生体高分子に対する攻撃性が高い低分子のアルデヒドで、ゲノムDNAやタンパク質の変性、ミトコンドリアの機能不全を誘導する。今年度、Nrf1を欠失したマウス肝の代謝物解析から、ATP、グルタチオン(GSH)にならび、mMオーダーで存在する細胞内主要低分子、ポリアミン類の組成比が崩れ、3-アミノプロパナールから非酵素的にアクロレインが発生し、アクロレイン抱合タンパク質が蓄積することを突き止めた。通常、スペルミンからスペルミジンへの分解は抑制されており、3-アミノプロパナールの発生量は低い。しかし、Nrf1欠失マウス肝では、本経路を活性化するスペルミジンオキシダーゼ(Smox)の異所的発現が認められた。実際にSmoxをレトロウイルスベクターで過剰に発現させると、遊離アクロレインが増加することを確認した。今回観察された肝における病変だけではなく、同様の現象が他の臓器や細胞でも誘引されると想定して、Smoxの機能阻害化合物を探索するために、組み替えSmoxタンパク質の発現に取り掛かった。バキュロウイルス発現システムを活用して、大量発現に取り掛かり、酵素アッセイに十分な量のタンパク質を回収することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

加齢との連関解析のために、3年齢マウス(加齢マウス:3Y)および遺伝的老化モデルマウス(Klotho欠失マウス:KL)を活用して、細胞内主要低分子ATP、GSH、ポリアミン類の量を測定した。その結果、3Y、KLにおいても、ATP、GSH、ポリアミン量は減少傾向である一方で、Nrf1欠失マウスと同様に、アクロレイン化タンパク質が顕著に増加しており、加齢においても、組織の機能低下の一因となるとが推察された。Smoxの異所的発現によって、内因的に生じるアクロレインは、近傍に存在する生体高分子を即座に攻撃してしまうと考えられ、外因性のものより極低濃度で毒性を発揮する。すなわち、内因性クロレインが関与する老化をはじめとする多様な疾患の予防や病態改善方策を探ることとし、これらの制御機構としてNrf1をこれらの酵素本体の制御のための分子メカニズムの一端を明確にできつつあり、また、直接制御のための低分子化合物の取得のため、Smox組換えタンパク質の発現および、酵素アッセイシステムを構築した。

今後の研究の推進方策

Nrf1が立体構造の形成不全、糖鎖等の修飾不良によって変性したタンパク質の認識や、分解および消去に関与するプロテアアソーム構成タンパク質群を統一的に制御することから、3Y、Klotho-/-およびNrf1欠失マウスにおいて共通する代謝異常の探索に取り組む。現時点では、全てのマウスにおいて、変性タンパク質が蓄積が確認できるが、その存在を認識する受容体タンパク質の発現が低いため、正常な小胞体ストレス応答ができないことが確認できた。加えて、プロテアソーム量も低いことから、変性タンパク質が蓄積し、小胞体ストレスを十分に解消できなくなっていると予想している。ただ、Nrf1を補正することで、変性タンパク質を除去できると想定しているが、現時点で、Nrf1を過剰発現しても、変性タンパク質の増加を防止できておらず、想定と現状が異なることについて、遺伝学的に検証を進めるために、mRNAシークエンス解析や、代謝物解析に取り組む。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022 その他

すべて 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] タンパク質恒常性の維持・老化と関連する環境転写因子Nrf1の解析2022

    • 著者名/発表者名
      辻田 忠志
    • 学会等名
      佐賀大学SDGsプロジェクト研究所「皮膚科学に関する知の拠点形成プロジェクト」第一回シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 新規Nrf1標的遺伝子Smoxとアクロレイン産生機序の解明2022

    • 著者名/発表者名
      平川 智章, 谷内 めぐみ, 井口 瑶子, 吉竹 紀子, 植村 武史, 辻田 忠志
    • 学会等名
      第44回蛋白質と酵素の構造と機能に関する九州シンポジウム
  • [学会発表] Hep3B細胞におけるKlothoノックダウンがアミノ酸飢餓応答とNrf1に与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      川村 友秋, Sudarma Bogahawaththa, 志賀 奏, 辻田 忠志
    • 学会等名
      第44回蛋白質と酵素の構造と機能に関する九州シンポジウム
  • [学会発表] Nrf1タンパク質量を調節する小胞体逆輸送機構の解析2022

    • 著者名/発表者名
      山田 剛暉, 馬 禎珠, 田上 愛祐美, 平川 智章, ボガハワッタ スダーマ, 川村 友秋, 辻田 忠志.
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] 転写因子Nrf1によるステロイド5αリダクターゼの調節解析2022

    • 著者名/発表者名
      マ ジョンジュ, 山田 剛暉, 平川 智章, Bogahawaththa Sudarma, 川村 友秋, 下村 隆, 辻田 忠志.転写因子Nrf1によるステロイド5αリダクターゼの調節解析
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] Nrf1 Upregulation Influence on Cellular Glucose Deficiency; using Stably Expressed Nrf1 Tet-on system2022

    • 著者名/発表者名
      Shanika Werellagama, Megumi Matsumoto, Mami Sato, Kento Sonoda, Tomoaki Kawamura, Marcus Conrad, Tadayuki Tsujita
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] Identification of a Novel Aging Controller and its Competitors in an Aging Mouse Model2022

    • 著者名/発表者名
      Sudarma Bogahawaththa, Tomoaki Kawamura, Kanade Shiga, Yo-Ichi Nabeshima, Ken Itoh, Tadayuki Tsujita
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [備考] 佐賀大学農学部生化学分野のホームページ

    • URL

      http://seika.ag.saga-u.ac.jp/

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公開日: 2023-12-25  

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