研究課題/領域番号 |
23H00638
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
名畑目 真吾 筑波大学, 人間系, 助教 (60756146)
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研究分担者 |
木村 雪乃 獨協大学, 法学部, 准教授 (40779857)
小木曽 智子 富山大学, 学術研究部教育学系, 講師 (90965427)
卯城 祐司 筑波学院大学, 経営情報学部ビジネスデザイン学科, 教授 (60271722)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 英語教育 / リーディング / 文章理解 / 視線計測 / 心理言語学 / コーパス / 自然言語処理 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,日本語を母語とする英語学習者の文章読解中における眼球運動データを収集し,それらをデータベースとして構築・公開することを目的としている。さらに,収集した眼球運動データの基本的な統計情報や特性を示すことで,今後の英文読解研究が参照するための基準(ベンチマーク)を提示するとともに,文章の難易度や学習者の英語力との関わりを明らかにすることで,英語教材の作成や英文読解力育成への示唆を得ることを目指している。 研究期間1年目である本年度は,眼球運動データの収集を行い,文章レベルで算出した各種指標について記述統計や相関などの基本的な分析を行った。具体的には,日本語を母語とする大学生・大学院生を協力者として,それぞれ300~400語程度の長さを持つ合計30の文章を読解した際の眼球運動をEyeLink 1000 (SR Research) により測定した。読解する文章は,英検準2級から準1級に相当する幅広い難易度のものを選定した。専用のソフトウェアを使って読解中の注視やサッケードを分析し,文章ごとの注視時間,注視回数,サッケード距離,読み戻りや読み飛ばしの頻度などの各種指標を算出した。得られた眼球運動データの指標について,平均値や標準偏差の他,分布や外れ値など基本的な統計情報を得ることで,今後の発展的な分析を行うための知見を得た。 さらに,文章の特徴として読みやすさの指標であるFlesch-Kincaid Grade Level,学習者の特徴として英文読解テストの得点を用いて,文章レベルでの眼球運動データとの関連を検討した。その結果,難しい文章ほど,あるいは読解力の低い学習者ほど,文章に対する注視時間や回数が増加し,読み飛ばしが少なくなり,読み戻りが増えることが示された。ただし,学習者の読解力よりも,文章難易度のほうが文章ごとの眼球運動データとの関連が強かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請時の通り,データの収集と解析を行い,文章ごとの注視時間や注視回数などの基本統計量を示すことができた。さらに,そのデータの一部を公開する段階まで進んだため,当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,単語ごとの眼球運動データを算出・整備し,その公開を目指す。加えて,第三者がデータを活用できるようにするために,データの信頼性や妥当性の検証も行っていく。 また,用いた文章について,語彙や文,結束性など多様な観点からその特徴を評価するとともに,それらの特徴が文章単位・単語単位の眼球運動データとどのように関わっているのかを統計モデルや機械学習によって明らかにしていく。その際に用いた文章特徴に関するデータもコーパスに含めて公開する予定である。
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