研究課題/領域番号 |
23H00912
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
増田 俊哉 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (10219339)
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研究分担者 |
増田 晃子 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 客員准教授 (80631720)
亀田 和美 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 特任助教 (70971133)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 焙煎反応 / ポリフェノール / 大麦 / カテキン類 |
研究実績の概要 |
本研究は,食材を高温加熱により調理加工することにより発生,または変化したポリフェノールを検出し,化学構造を特定し,機能を確認する。さらに,実際の加熱調理加工による生成ポリフェノールを分析し,物質の化学構造と生成蓄積量分析に基づく機能のエビデンスを取得することを目的にし,開始年度の研究成果として,以下の結果を得た。 1)高温加熱加工が重要な機能性発現に寄与している食材及びその製品の選抜:機能性として,生活習慣病軽減能に関係するキサンチンオキシダーゼ(XO)阻害能に着目し,各種の焙煎食品をスクリーニングした結果,大麦を選抜した。大麦を焙煎した食品は,麦茶や麦こがしとして,古来より日本の食文化でよく知られている。なお,市販の麦茶からXO阻害物質として,ピロガロールと構造不明の1種の物質を特定した。 2)同食品製品からの機能性物質の分析と食品の評価:麦茶中のピロガロールのHPLCによる微量定量法を確立した。その方法を用いることで,市販の麦茶中のピロガロール量とXO阻害活性の相関解析が可能になった。なお,焙煎状態の評価は,大麦粉末でのみ行えたが,加工調理の過程での焙煎粒体そのものの評価方法を確立することが必要であることが判明した。 3)ポリフェノールの焙煎反応による機能性成分の生成:食材に多く存在するポリフェノールとして,カテキン,エピカテキンに着目し,その焙煎反応を行い,反応物のXO阻害活性を評価した。カテキン,エピカテキンそのものにはXO阻害活性は認められなかったが,それらを170℃以上に加熱したものには,強力なXO阻害活性が出現することを認めた。今後,その活性物質の特定が必要である。 4)生成反応機構解明のための手法の開発:焙煎反応に,ラジカル酸化が重要であることから,ポリフェノールのラジカル反応を解析した。その際の機構解明において,量子化学的シミュレーションの有効性を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標に対して,焙煎大麦食品から,キサンチンオキシダーゼ(XO)阻害機能物質の一つを特定し,その定量法まで確立した。ポリフェノールのうち,カテキン類の焙煎反応により,新たにXO阻害活性が出現することをはじめて確認した。さらに,焙煎反応の機構解明に向けての手法開発を行った。これらは,すべて次年度の研究遂行に重要な成果であるため,本研究は概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ順調であるため,当初計画にしたがって以下の項目について研究を進める。 1)焙煎食品からの機能性ポリフェノールの同定を進める。 2)カテキン類焙煎物に存在する機能性物質の構造解析を進める。 3)機能の発現機構を,今年度設置したWSによるシミュレーション法で解明する。 4)加工調理中の大麦粒体の焙煎度の測定法を開発し,実際の焙煎調理加工における機能評価法の確立を目指す。 5)食品の主要成分からの機能性ポリフェノールの高温加熱による発生について検証する。
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