研究課題/領域番号 |
23H01186
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
水野 恒史 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (20403579)
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研究分担者 |
大野 寛 東北文教大学, 人間科学部, 教授 (70320611)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | パルサー風星雲 / X線偏光 / GeVガンマ線 / 粒子加速 / 粒子伝播 |
研究実績の概要 |
本研究はIXPE衛星およびFermi衛星データを用いた2つのテーマ(柱)からなる。 2023年度は第一の柱(IXPE衛星を用いたX線偏光観測による若いパルサー風星雲(PWN)の探査)に関して,「かに星雲」「MSH15-52」「PSR B0540-69」という3つのターゲットについて4つの論文を出版した。「かに星雲」では,偏光度の空間分布がパルサーの回転軸に対して極めて非対称な形状であることを明らかにした。加えて,終端衝撃波付近ではパルサーの回転軸に垂直だった磁場が遠方に行くにつれ徐々にずれていくことを見出し,またシミュレーションとの比較を通して乱れた磁場の寄与を定量評価した。MSH 15-52は磁場方向がフィラメント形状に沿っていることや,領域の一部でシンクロトロン放射の上限に近い高偏光度であること(磁場が極めてよく整列していること)を明らかにした。PSR B0549-69は系外天体であるため平均的な偏光度・磁場のみの測定であるが,磁場方向とトーラスの向きがずれていることを初めて見出した。これらの成果は国際会議や国内会議(招待講演を含む)で報告をした。 第二の柱(Fermi衛星を用いたGeVガンマ線によるPWNハローの探査)では,バックグラウンドとなる銀河面放射モデルの改良のために高銀緯分子雲領域の解析を行った。従来,地球上で測定された宇宙線スペクトルに基づくガンマ線強度の予想と,Fermi衛星による実測の間の乖離が知られていたが,中性水素21cmのライン幅を用いたガスモデルの改良を行うことで,ずれを大きく低減することができた。結果をFermiチーム会議で報告し密な議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の柱(IXPE衛星を用いたX線偏光観測による若いパルサー風星雲(PWN)の探査)に関しては,「かに星雲」「MSH15-52」「PSR B0540-69」という3つのターゲットに関し4つの論文を出版した。実績概要で述べたように3天体いずれも事前の予想を覆す結果が得られた。特に「かに星雲」については,最初のチーム論文を主要メンバとして,詳細解析論文を主著者として出版しており,パルサー星雲の磁場構造について,IXPEチーム内で主体的な役割を果たしつつ新たな知見をもたらすことができた。 第二(Fermi衛星を用いたGeVガンマ線によるPWNハローの探査)では,バックグラウンドとなる銀河面放射モデルの改良のために高銀緯分子雲領域の解析を進めてFermiチーム会議で報告し,鍵となる星間ガスのモデルテンプレートの改良について密な議論を行い,有益なフィードバックを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はIXPE衛星およびFermi衛星データを用いた2つのテーマ(柱)からなる。 第一の柱(IXPE衛星を用いたX線偏光観測による若いパルサー風星雲(PWN)の探査)では、「かに星雲」の第二チーム論文を完成させ公開(出版)する。偏光撮像によるパルサー星雲内の粒子伝播が議論が柱となる。follow-up論文による詳細解析および、複数のPWNの結果を踏まえた統一的な議論にも取り組む。解析は水野+大学院生が主に行い,他のメンバーが適宜サポートする。 第二の柱(Fermi衛星を用いたGeVガンマ線によるPWNハローの探査)では,バックグラウンドとなる銀河面放射モデルの改良のために高銀緯分子雲領域の解析を行っており,良好な結果が得られている。得られた知見を論文にまとめる。また銀河面放射モデルの改良に,Fermi衛星チーム内のワーキンググループと協力して引き続き取り組む。PWNハローの探査にも着手する。
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