研究課題
肝細胞特異的にアポトーシスが誘導される肝細胞特異的Mcl-1欠損マウスにおいて、肝細胞だけでなく、類洞内皮細胞やクッパー細胞で様々なサイトカイン発現の上昇を認めた。また、シングルセルRNAシーケンスレベルで細胞老化を特定する目的にSenMayo genesetが提唱されている(Dominik.S, et al. Nat Commun. 2022 16;13:4827)。慢性肝炎患者および健常ドナー患者の肝組織でシングルセルRNAシーケンスを行ったところ、慢性肝炎患者の肝星細胞および肝類洞内皮細胞では、健常ドナーと比較してSenMayo genesetスコアが高い傾向にあり、細胞老化が生じていることが示唆された。in vitroの研究では、LX-2およびTMNK-1細胞株にドキソルビシンを投与することで細胞老化が誘導されることを確認した。細胞老化を誘導したLX-2ではACTA2やCOL1A1といった線維化マーカーの発現低下を認めた。また、高脂肪食投与マウスにおいて、非実質細胞ではGDF15などの老化関連遺伝子発現が増加していた。GDF15は分泌タンパクであり、血中濃度も測定可能である。メタボリック関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者でGDF15を測定したところ、GDF15高値のMASLD患者は、肝発癌の発生率も高かった。多変量解析でもGDF15高値はFib-4 indexと独立した肝発がんリスク因子であった。また、GDF15高値のMASLD患者は、非代償性イベント発症率が高く、予後も不良であり、心血管イベントも高値であり、MASLD患者の病態進展に大きく関与していた。
2: おおむね順調に進展している
臨床検体を用いた細胞老化の関与、また慢性肝疾患患者における細胞老化関連因子と肝発がんの関係について解明することができた。また、肝星細胞特異的および肝類洞内皮細胞特異的な細胞老化誘導マウスも順調に作成できており、本研究課題は概ね順調に進展している。
引き続き、慢性肝疾患における肝細胞死刺激を起点とした非実質細胞の細胞老化誘導機序の解明を推進する。肝細胞死刺激を起点とした慢性肝疾患モデルマウス(肝細胞特異的Mcl-1欠損マウス)の肝臓や、高脂肪食負荷マウスの肝臓および、慢性肝炎患者の肝組織を用いて、どのような細胞間情報伝達物質を介して、肝細胞に対するストレス刺激が非実質細胞へと影響するのかを検討していく。また、非実質細胞における細胞老化が肝発癌に与える影響と機序の解明としては、肝星細胞特異的および肝類洞内皮細胞特異的な細胞老化誘導マウスを用いて研究を進める。同時にMASLDだけでなく、ほかの肝疾患も含めて肝発癌に関連するSASP関連因子の肝臓内における発現量や血清タンパク濃度とその後の肝発癌の関係を検討し、細胞老化関連の肝発がん予測因子を探索する。
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Hepatology Communications
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